
2026年3月、iPS細胞を使用したパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」が条件および期限付き承認されました。しかし、適応にはさまざまな条件があり、実施できる施設も限られているため、すべてのパーキンソン病患者さんがこの治療法を受けられるわけではありません。
今回は、パーキンソン病に対するiPS細胞由来の細胞移植とはどのような治療法なのか、どのような方に適応があるのか解説します。アムシェプリ以外の再生医療の選択肢についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.iPS細胞を用いた新しいパーキンソン病治療とは
iPS細胞を用いたパーキンソン病治療は、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞(ドパミン神経細胞に分化する前の細胞)を移植し、パーキンソン病で減少したドパミンの量を補う治療法です。2026年3月に、iPS細胞を用いたパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」が条件および期限付き承認され、保険診療下で使用できるようになりました。
※当院では、アムシェプリの取り扱いは行っておりません。
<パーキンソン病のメカニズム>
パーキンソン病は、脳内でドパミンをつくる「ドパミン神経細胞」が減少する指定難病です。ドパミンには運動機能を調整する役割があるため、不足すると手足の震え、筋肉のこわばり、運動の遅延、姿勢維持の困難といった運動障害が現れます。
現在の治療の中心は、ドパミンの量を補う薬の服用やリハビリテーションによる対症療法であり、進行を遅らせることはできても、完全に食い止めるのは難しいとされています。
パーキンソン病の症状やメカニズム、薬の種類については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>パーキンソン病の根本原因に作用する「幹細胞治療」再生医療の研究で開発された治療法を紹介
<iPS細胞移植に期待できる効果>
iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を移植すると、神経細胞の減少により不足したドパミンの量を補うことができます。運動症状の改善のほか、パーキンソン病の主要な治療薬「L-ドパ」の長期服用で問題となる「ウェアリングオフ(薬の効果が短時間で切れる現象)」の軽減効果も得られるとされています。
京都大学医学部附属病院と京都大学iPS細胞研究所が連携して行った2018年からの治験では、7名のパーキンソン病患者のうち6名が有効性評価の対象となり、そのうち4名に運動症状の改善が見られました。画像検査では被殻におけるドパミン神経の活動が増加していることが確認され、24ヶ月間の観察で腫瘍化などの重大な有害事象も認められませんでした。
参照:「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」において安全性と有効性が示唆
<細胞の移植方法>
全身麻酔下で頭蓋骨に小さな穴を開け、脳に針を刺して細胞を移植します。
iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を移植するのは、脳の「被殻」という部分です。パーキンソン病の運動症状は、中脳の「黒質」という部分にあるドパミン神経細胞が減少し、被殻へ届くドパミンが不足することで起こると考えられています。
┃2.iPS細胞治療の適応条件
iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞移植を受けるには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 進行期のパーキンソン病患者である
- 全身麻酔を伴う移植手術に耐えられる状態である
- 移植後のフォローアップのため、長期的に通院できる
iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞移植の対象者は、主にL-ドパなどの薬物療法を行ってもウェアリングオフ現象が起こり十分な効果が得られない方とされています。移植のための手術は全身麻酔下で行うため、年齢や持病などにより全身麻酔が行えない場合も適応外になると考えられます。
┃3.点滴で行える再生医療の選択肢
iPS細胞由来の細胞移植は、すべてのパーキンソン病患者に適応があるわけではありません。しかし、パーキンソン病に対する再生医療には、別の選択肢もあります。
ここでは、当院が行う幹細胞治療とサイトカインカクテル療法の2つをご紹介します。
※いずれも自由診療となります。
<幹細胞治療>
幹細胞は、さまざまな役割を持つ細胞に分化する前の細胞です。自ら細胞分裂を行い、不足した細胞の代わりとなることができます。
当院が行う幹細胞治療では、患者さんの体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。
静脈内に幹細胞を投与すると血管を通して脳に到達し、失われたドパミン神経細胞を補ってパーキンソン病の症状を改善する効果が見込めます。また、幹細胞には神経の保護、修復、炎症抑制などの作用がある物質を放出する働きもあるとされています。
料金や診療の流れについては、以下のページをご覧ください。
<サイトカインカクテル療法>
歯髄由来幹細胞から分泌される「サイトカイン」という物質を投与し、脳内の幹細胞を活性化して自己修復を促す治療法です。投与方法には点滴のほか、より効率的に脳へサイトカインを届けられる点鼻投与もあります。
当院では、脳細胞を守る働きがあるグルタチオンを投与する「グルタチオン点滴療法」とサイトカインカクテル療法を組み合わせた治療も行っております。パーキンソン病患者の脳内ではグルタチオンが減少していることがわかっており、グルタチオン点滴によって脳の神経細胞の脱落や変性を抑える効果が期待できます。
料金や診療の流れについては、以下のページをご覧ください。
>>パーキンソン病に対するサイトカインカクテル療法 | 表参道総合医療クリニック
┃4.よくある質問
<Q.パーキンソン病のiPS細胞治療を受けるには、どのくらいの費用がかかりますか?>
iPS細胞を利用したパーキンソン病治療薬「アムシェプリ」の価格は、約5,500万円です。ただし、公的医療保険や高額療養費制度の対象となるため、実際の支払額は抑えられます。
実際の自己負担額は、年齢や所得によって異なります。詳しい金額が知りたい方は、厚生労働省などのホームページをご参照ください。
<Q.パーキンソン病は治らないのですか?>
現在の医療では、完治はしないとされています。しかし、適切な治療によって症状をコントロールしたり、進行を緩やかにしたりして、生活を送りやすくすることは可能です。
<Q.パーキンソン病の薬が効かなくなってきたらどうすればよいですか?>
パーキンソン病の薬には、さまざまな種類があります。主治医と相談して別の薬を検討したり、再生医療などの新しい治療法を検討したりするのもよいでしょう。
当院では、標準治療で十分に症状が改善しないパーキンソン病患者さんからのご相談も承っております。症状や経過、ご希望などに応じて治療法をご提案しますので、まずはお問い合わせください。
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