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公開日:2025.02.05
最終更新日:2026.09.25

パーキンソン病の根本原因に作用する「幹細胞治療」再生医療の研究で開発された治療法を紹介

「パーキンソン病」とは、脳の中でドパミンをつくる神経細胞が減少し、手足が震える、動作がゆっくりになる、倒れそうになるといった症状が出る病気です。これまで、薬物療法などで症状を和らげることはできても、根本治療は難しいとされていました。

しかし、近年では再生医療の研究が進み、新たな治療法の可能性が広がっています。今回は、パーキンソン病のこれまでの治療法と、再生医療の中でも「幹細胞」を使った治療法についてご紹介します。

<コラム監修者>

田中聡院長

田中聡(たなか さとし)

表参道総合医療クリニック院長


大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。

┃1.パーキンソン病とは


脳の構造

パーキンソン病は、体の動きに関係する神経伝達物質である「ドパミン」の量が減り、手足の震えなどの動きの異常が現れる指定難病です。

ドパミンは、中脳の「黒質」という部分の神経細胞(黒質ドパミン神経細胞)でつくられています。何らかの理由でこの神経細胞が減ってしまうと、ドパミンが不足し、運動機能の調節機能がうまく働かなくなると考えられています。

黒質ドパミン神経細胞が減少する原因は、完全には明らかになっていません。パーキンソン病の患者数は1000人に1人~1.8人程度ですが、65歳以上の高齢者では100人に約1人程度と、決して珍しい病気ではありません。

参照資料:難病情報センター

<主な症状>

主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 体の震え(安静時振戦:安静な状態にあるにもかかわらず震えが起きる)
  • 筋肉のこわばり
  • 表情を変える、瞬きする、歩く、話すといった運動の遅延
  • 姿勢やバランスが維持できない・転びやすい
    • 便秘、頻尿、発汗、疲れやすい、嗅覚の低下、立ちくらみ、気分が憂うつになる、意欲が低下するなど、運動以外の症状を伴う場合もあります。また、パーキンソン病患者さんはパーキンソン病でない人と比べて、認知症の発症率が高いこともわかっています。

      ┃2.パーキンソン病のこれまでの治療法

      現在のパーキンソン病の主な治療法は、薬物療法とリハビリテーションです。患者の年齢や進行の程度に合わせて、治療計画を立てていきます。

      <薬物療法>

      パーキンソン病の治療の基本は薬物療法です。薬で減少したドーパミンの量を補い、症状の緩和を目指します。症状や進行度、体の状態などに応じて、複数の薬を組み合わせる場合もあります。

      主な薬剤 詳細
      L-ドパ(レボドパ) パーキンソン病治療薬の中でも、中心的な役割の薬です。体内に吸収されると脳内でドパミンに変化し、ドパミン量を補います。ただし、神経の変性が進行して脳内で十分なドパミンを維持できなくなると、L-ドパ服用後2~3時間で効果が切れてしまい、動けなくなることがあります(ウェアリングオフ)。また、神経系が過敏になり、身体が勝手に動いてしまう「ジスキネジア」という症状が出ることもあります。
      ドパミンアゴニスト L-ドパの副作用である薬効の変動や、ジスキネジアが生じにくい薬です。しかし、L-ドパに比べて服用から効果が出るまで時間がかかり、吐き気や幻覚、妄想、衝動制御障害などの副作用が出る場合もあります。
      抗コリン薬 神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを阻害して、副交感神経の働きを抑える薬剤です。ただし、物忘れや幻覚といった認知機能障がいの副作用のリスクがあり、特に高齢者では使用に注意が必要です。
      塩酸アマンタジン 脳梗塞後遺症やA型インフルエンザの治療にも使われている薬剤です。脳内でドーパミンを放出・合成する作用がありますが、すべての患者に効くわけではありません。また、幻覚や妄想などの副作用が出る場合もあります。
      ゾニサミド もともとはてんかんの治療薬でしたが、2009年からパーキンソン病の治療薬としても認可がおりた薬です。L-ドパと併用すると、L-ドパのデメリットであるウェアリングオフを軽減する効果が見込めます。
      アデノシン受容体拮抗薬 日本で開発された薬です。L-ドパと併用することで、ウェアリングオフを軽くする作用が期待できます。
      モノアミン酸化酵素-B(MAO-B)阻害薬 ドパミンの分解を抑制し、L-ドパの効果を延長させる薬です。ただし、ジスキネジアが悪化するリスクがあります。
      カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害薬 L-ドパが血液中の酵素によって分解されるのを防ぎ、L-ドパが脳内に入る量を増やす薬です。
      ドロキシドパ パーキンソン病の症状の1つである「すくみ足(動き出そうとしているのに足が出ない)」に対応する薬です。

      <リハビリテーション>

      運動機能を維持・改善するため、リハビリテーションも重要視されています。

      運動療法には、歩行速度やバランス能力、日常生活動作などの改善効果があることがわかっています。歩行、体操、姿勢維持のためのストレッチなどの運動が一般的に行われていますが、症状には個人差があるため、転倒に注意して無理のない範囲で行うことが重要です。

      <脳深部刺激療法>

      脳深部刺激療法とは、脳内に刺激電極を挿入し、脳の一部の組織へ持続的に電気刺激を与えることでパーキンソン病の症状を抑える治療です。視床下核や淡蒼球という脳の深い場所を刺激します。

      ┃3.パーキンソン病治療で注目を集める再生医療

      パーキンソン病の発症メカニズムには解明されていない点もありますが、黒質ドパミン神経細胞の減少が原因であることがわかっています。一般的な治療法では神経細胞の再生や回復が難しく、対症療法で進行を遅らせることが現在の治療の中心です。しかし近年では、再生医療の研究が進展し、神経細胞も再生できる可能性が高まってきました。

      神経細胞の再生が期待できる再生医療の一つが、「幹細胞治療」です。

      <幹細胞治療とは>

      幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

      パーキンソン病に対する幹細胞治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。

      <なぜ幹細胞治療がパーキンソン病に効果を発揮するのか>

      静脈内に幹細胞を投与することで、幹細胞が血管内を移動して脳に到達します。すると、幹細胞が分化して失われたドパミン神経を補い、症状の改善が見込めるのです。また、幹細胞には、神経の保護や修復、炎症の抑制などの作用がある物質を放出する働きもあるとされています。このような作用が相互に働くことで、症状の緩和や進行の抑制に効果が見込めると考えられているのです。

      ┃4.当院の幹細胞治療の流れ

      当院で行っている幹細胞治療の流れを紹介します。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

      <①カウンセリング>

      事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

      <②検査>

      感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

      <③脂肪採取>

      腹部から少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

      <④幹細胞の培養>

      脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。

      <⑤幹細胞の静脈内投与、局所投与>

      培養した幹細胞を点滴、局所に投与します。

      <⑥経過観察>

      その後の効果について定期的に経過観察を行います。

      ┃5.費用について

      当院の治療メニューと料金をご紹介します。

      項目 価格
      医師による診察・カウンセリング 11,000円
      感染症検査(採血) 11,000円
      幹細胞点滴(1億個) 1,650,000円

      ┃6.幹細胞治療のメリットとデメリット

      幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

      <メリット>

      • 患者自身の細胞を使っているので副作用や拒絶反応のリスクを抑えられます
      • 根本的に治療ができる可能性があります
      • 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

      <デメリット>

      • 自由診療のため保険が適応されません
      • 新しい治療法のため、長期での効果や体への影響が確認されていません
      • 患者さん自身の再生力を利用した治療法なので、効果の現れ方に個人差があります

      ┃7.まとめ

      神経細胞は自然修復が難しく、これまでは薬剤でドパミン量を補ったり、リハビリテーションで機能の維持・改善を目指したりする対症療法が、パーキンソン病治療の中心でした。しかし、近年では再生医療の発展によって、神経細胞の修復による治療が目指せるようになってきています。

      「治療薬の効果が薄くなってきた」「リハビリテーションを続けているが症状が進行してきた」など、パーキンソン病治療でお悩みを抱えているなら、ぜひ当院にご相談ください。

      再生医療

      【参考資料・論文】
      ・難病情報センター
      ・一般社団法人 日本神経学会 ガイドライン
      ・パーキンソン病・本能性振戦の手術療法 脳深部刺激療法(DBS)
      ・パーキンソン病に対する多能性幹細胞を用いた細胞移植治療の現状
      ・パーキンソン病に対する幹細胞治療①
      ・パーキンソン病に対する幹細胞治療②
      ・Parmar M. et al. The future of stem cell therapies for Parkinson disease , Nature reviews neuroscience, 2020
      ・製薬会社のバイエル社は、子会社がおこなったパーキンソン病に対する幹細胞治療の結果を発表(BlueRock’s Phase I study with bemdaneprocel in patients with Parkinson’s disease meets primary endpoint)
      ・Effects of intravenous human umbilical cord blood CD34+ stem cell therapy versus levodopa in experimentally induced Parkinsonism in mice

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