腹腔内化学療法

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腹腔内化学療法とは

抗癌剤を腹腔の中に直接注入する治療法を腹腔内化学療法といいます。

腹腔すなわち「胃や腸,肝臓や子宮,卵巣といった臓器を収めているお腹の中」に直接薬剤を注入して,腹腔内の薬剤濃度を高め,この中の病巣に対する治療効果を高めようとするものです。この場合,薬剤がこれらの臓器の中に深く浸透する訳ではありませんので,特にその表面や腹膜などに存在する病巣への治療が主となります。また,腹腔内化学療法では,その対象となる疾患や使用される薬剤によっては,投与された薬剤の一部は腹膜から吸収されて全身に回り全身的な効果をあげることから,静脈注射と同様の全身投与のための薬剤の入り口として腹腔を利用し,腹腔内病巣に対する局所効果と腹腔以外の部位の病巣に対する全身化学療法を同時に行う手段として用いられる場合もあります。

腹膜播種とは

がんが腹腔内に散らばった形で転移を形成する腹膜播種は、胃癌、膵臓癌、大腸癌などの消化器癌や卵巣癌、尿管癌などの癌腫において頻繁にみられる難治性の病態です。腹膜播種は胃癌においてリンパ節転移や肝転移と並んで最も頻度が高い転移の一つで、特にスキルス胃癌では見付かった時点で腹膜播種があることも少なくありません。
近年の抗癌剤の進歩により切除不能進行がん患者さんの予後は著しく向上しましたが、通常の全身化学療法だけでは腹膜播種に対する効果は乏しく、その予後は極めて不良です。 当院では、腹膜播種を対象として、タキサン性抗癌剤や遺伝子抑制治療を腹腔内に反復投与するを腹腔内化学療法を実施しております。

腹膜播種の症状・合併症

  • 腹膜播種は、初めのうちは特に症状はなく、CTなどの検査でも見つからないことが多いです。
  • 腹膜播種が進行すると、お腹の中に腹水がたまったり、大腸や小腸が狭くなったり、尿の流れが悪くなったりすることがあります。このような合併症により腹部膨満感、腹痛、吐き気などの症状がみられることがあります。

腹膜播種の治療

  • 腹膜播種を手術で完全に取りきることは難しく、仮に肉眼的に取りきれた場合でも術後に再発することが多いことが分かっています。そのため、腹膜播種が見つかった場合は、基本的には胃の切除は行われず、抗癌剤による治療(化学療法)が中心となります。
  • 一般的には、抗癌剤の点滴静脈注射や内服(飲み薬)による全身化学療法が行われています。国内の臨床試験では、生存期間中央値は12~14か月と報告されています。(生存期間中央値:治療を受けた患者さんのうち、生きている患者さんが半数になるまでの期間)

治療内容

当院では腹膜播種のある患者様に対して自由診療としてパクリタキセル腹腔内投与治療を実施しています。

治療にかかる費用

パクリタキセル腹腔内投与は健康保険が適用されない治療ですので、その他の薬剤、検査や診察などを含めて保険を使用することができず、費用は患者さんの10割負担となります

  • 初回の投与は外来で行い、その費用額は1回投与で約22~33万円です。
  • 2回目以降も外来で行います。
  • その他に9~12週間に1回程度、治療の効果を評価するための検査の費用として、胸腹部CT検査などの費用が必要となります。

腹腔内化学療法の方法

腹腔ポートを使う方法を腹腔穿刺による方法があります。

腹腔ポートを使う方法
  • 腹腔内化学療法の開始に先立って、腹部の皮膚の下に抗癌剤を注入するための腹腔ポートを留置します。
腹水穿刺の方法
  • 腹水がたまっている患者さんでは、腹腔ポートの代わりにカテーテルを留置して、治療に使用することがあります。

腹腔内投与の実際

腹腔ポートに針を刺し、生理食塩水500mlを1時間かけて注入します。同時にアレルギーや吐き気を予防するための薬を点滴静脈注射します。

次に生理食塩水500mlに溶かしたパクリタキセルを1時間かけて注入します。パクリタキセルが腹膜播種と直に接することになります。

患者さんの状態にもよりますが、通常は外来通院で行うことができる治療です。また、投与の後に生活や食事などの制限はありません。

腹腔内化学療法の副作用・合併症

  • 抗癌剤の腹腔内投与により、まれに軽い腹部膨満感がみられることがあります。
  • 腹腔ポートに関連した合併症として、腹腔ポート感染や腹腔カテーテル閉塞などがみられることがあり、ポートの抜去や交換が必要になることがあります。

腹腔内化学療法の特徴

腹腔内化学療法のメリット

腹腔内化学療法のメリット

  • 腹腔内化学療法では、投与された抗癌剤が腹腔内全体に広がり、高い濃度のまま腹膜播種と直に接します。一般に抗癌剤は、多くの量・高い濃度の薬が癌に届き、その状態が長く続くほど、効果が高くなります。
    (一方で、全身化学療法では、投与された抗癌剤のごく一部しか腹膜播種に到達しません。腹膜の血管は非常に細く、腹膜を流れる血液は約2m2の広さの腹膜全体で全身を循環する血液の1~2%に過ぎません。)
  • パクリタキセルは、シスプラチンやマイトマイシンなどの薬剤と比較して、腹腔内投与後に非常に長い間腹腔内にとどまります。以前私たちが実施した臨床研究では、腹腔内の薬の濃度は3日間以上も有効な値を超えていました。
  • 腹腔内に投与されたパクリタキセルは少しずつゆっくり吸収されますので、吐き気、食欲不振などの全身的な副作用はほとんどありません。

腹腔内化学療法の限界

腹腔内化学療法のメリット

  • 腹腔内に投与された抗癌剤は、腹膜播種の表面から中に染みこんでいきますが、1mm以上の深いところまでは薬は届きません。また、胃の原発巣、リンパ節の転移などには効果はありません。
  • 手術後の患者さんなど、腹腔内に癒着がある場合は、薬が届かない部分があることがあります。

腹腔内化学療法の紹介記事

進化する腹膜播種の化学療法

腹膜播種に対する3つの腹腔内投与療法が先進医療に
https://gansupport.jp/article/cancer/recurrence/14406.html

日経メディカル

腹膜転移胃癌へのパクリタキセルの腹腔内追加投与法は有効な可能性【ASCO2016】
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201606/547122.html

がんサポート

お腹に直接抗がん剤を注入し、高い治療効果 あきらめないで!胃がん腹膜播種の治療に新たな光明
https://gansupport.jp/article/cancer/stomach/2902.html

消化器癌治療の広場

腹膜播種を有する胃癌患者に対するPaclitaxelの腹腔内・経静脈投与とS-1の併用療法vs. S-1とCisplatinの併用療法の第III相比較試験:PHOENIX-GC試験
https://www.gi-cancer.net/gi/ronbun/archives/201809-02.html

腹腔内化学療法の紹介記事

Ishigami H, Kitayama J, Kaisaki S, et al. Phase II study of weekly intravenous and intraperitoneal paclitaxel combined with S-1 for advanced gastric cancer with peritoneal metastasis. Annals of Oncology 2010 Jan;21(1):67-70.
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0923753419382304

Ishigami H, Fujiwara Y, Fukushima R, et al. Phase III Trial Comparing Intraperitoneal and Intravenous Paclitaxel Plus S-1 Versus Cisplatin Plus S-1 in Patients With Gastric Cancer With Peritoneal Metastasis: PHOENIX-GC Trial. Journal of Clinical Oncology 2018 Jul 1;36(19):1922-1929.
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.2018.77.8613

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