
再生医療の進歩により、これまで治りにくかった症状にも、新しい治療の選択肢が生まれています。その代表的な例が「幹細胞治療」と「PRP療法」です。
いずれも患者さんご自身の細胞や血液を利用しますが、作用の仕組みや治療にかかる期間、身体への負担などが異なります。この記事では、両者の違いとメリット・デメリットを解説します。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
◆目次
1.幹細胞治療とは?
2.PRP療法とは?
3.【比較】幹細胞治療とPRP療法の主な違い
4.幹細胞治療・PRP療法の主な適応疾患
5.よくある質問
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┃1.幹細胞治療とは?
幹細胞は、さまざまな組織を構成する細胞へ分化し、組織の維持や修復に関わる細胞です。自分と同じ性質を持つ細胞をつくる「自己複製能」と、特定の機能を持つ細胞へ変化する「分化能」を備えています。
当院では、腹部などから少量の脂肪組織を採取し、そこから分離した自己脂肪由来間葉系幹細胞を細胞培養加工施設(CPC)で培養・増殖させ、症状に応じて局所または静脈内へ投与します。
間葉系幹細胞には、成長因子やサイトカインなどを分泌して周囲の細胞へ働きかける「パラクライン作用」があります。これにより、周辺の組織の修復を促進します。
<メリット>
- 組織の修復や炎症の抑制が期待できる
- 神経など自然修復が難しい組織に対しても、修復の促進を期待できる
- 患者さんご自身の細胞を使うため、拒絶反応が起こりにくい
<デメリット>
- 細胞の培養に数週間を要する
- 効果には個人差がある
- 脂肪の採取部位に痛み、腫れ、内出血などが生じることがある
┃2.PRP療法とは?
PRPは「Platelet-Rich Plasma」の略で、日本語では「多血小板血漿」と呼ばれます。患者さんご自身の血液を採取し、遠心分離によって血小板を多く含む血漿成分を抽出して患部へ注射する治療です。
血小板には、PDGFやTGF-β、VEGFなど、組織の修復に関与する成長因子が含まれています。これらが患部の細胞へ働きかけ、身体が本来持つ自己修復機構の促進が期待できます。
<メリット>
- 採血と注射が中心で、身体への負担が少ない
- 原則として採血した当日に投与できる
- 幹細胞治療より費用を抑えやすい
- 患者さんご自身の血液を使うため、拒絶反応が起こりにくい
<デメリット>
- 効果には個人差がある
- 投与後に一時的な痛み、腫れ、熱感などが生じることがある
┃3.【比較】幹細胞治療とPRP療法の主な違い
| 比較ポイント | 幹細胞治療 | PRP療法 |
|---|---|---|
| 主な作用 | 間葉系幹細胞の分化能やパラクライン作用により、組織の修復・再生を促す | 血小板由来の成長因子により、組織の自己修復機構を促進する |
| 治療の材料 | 腹部などから採取した脂肪組織由来の幹細胞 | 採血した血液から精製した多血小板血漿 |
| 治療までの期間 | 脂肪採取後、培養に数週間を要する | 採血と同日に投与可能 |
| 当院の費用の目安 | 1部位165万円~(税込) | PRP:33万円~(税込) |
※税込・自由診療です。
※治療部位や治療内容によって費用は異なります。
※診察料・検査料などが別途必要となる場合があります。
<1.治療アプローチの違い>
PRP療法は、患者さんの血液から血小板を多く含む成分を抽出して患部へ投与し、血小板から放出される成長因子によって、患部にもともと存在する細胞の働きや自己修復機構を促す治療です。
一方、幹細胞治療は、培養・増殖させた間葉系幹細胞そのものを投与し、その分化能やパラクライン作用を通じて、炎症の抑制や組織修復を促します。
<2.治療にかかる期間の違い>
PRP療法では、採血した血液を遠心分離し、原則として同日に患部へ投与します。採血からPRPの投与まで、院内で一連の処置を行うことが可能です。
幹細胞治療では、局所麻酔下で腹部などから少量の脂肪組織を採取します。その後、幹細胞を分離・培養してから投与するため、治療までに数週間が必要です。
<3.効果の持続性と費用の違い>
幹細胞治療は細胞の培養や品質管理が必要なため、PRP療法より費用が高くなる傾向があります。
※効果や持続期間には個人差があります。
┃4.幹細胞治療・PRP療法の主な適応疾患
幹細胞治療とPRP療法は、それぞれの作用や特徴に応じて、さまざまな疾患や症状を治療対象としています。ただし、当院では疾患名だけで適応を判断することはありません。症状や画像所見、損傷の程度、これまでに受けた治療などを確認し、医師が総合的に判断します。
<幹細胞治療>
脳卒中の後遺症、慢性疼痛、スポーツ外傷などによる運動器障害、神経変性疾患、認知機能障害、心不全、動脈硬化、肝機能障害、動脈瘤などを治療対象としています。
<PRP療法>
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頚椎神経根症、変形性関節症(膝・股関節など)、靭帯損傷(肘・膝・足首など)、膝関節軟骨損傷、半月板損傷、膝蓋腱炎などが対象となります。
┃5.よくある質問
<Q1:副作用やアレルギー反応の心配はありませんか?>
どちらの治療も、患者さんご自身の細胞や血液を使用するため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクは低いとされています。主な副作用は、注射部位の痛みや腫れ、内出血、感染などです。
<Q2:治療に伴う痛みや日常生活への影響はありますか?>
PRP療法では、採血時や患部への注射時に痛みを感じるほか、投与後に一時的な痛みや腫れが生じることがあります。
幹細胞治療で脂肪を採取する際は局所麻酔を使用しますが、採取後に軽い痛みや内出血が数日続く場合があります。いずれも身体への負担は少ない治療です。
<Q3:幹細胞治療とPRP療法のどちらが自分に適していますか?>
適した治療は、疾患の種類や症状、損傷の程度、画像検査の所見などによって異なります。診察や検査の結果に加え、これまでに受けた治療や患者さんのご希望も踏まえて、医師が総合的に判断します。
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