
元中日ドラゴンズで投手の石川翔選手が、2026年5月に「脊髄梗塞」を発症し、下半身麻痺となったことを発表しました。プロ野球新球団でファーム・リーグ中地区に参加している「ハヤテベンチャーズ静岡」に入団した直後の出来事だったということもあり、その報告に注目が集まりました。発症から約2か月——石川選手はどのような状況なのでしょうか? 脊髄梗塞の症状や原因などとともにご紹介します。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
◆目次
石川翔投手の経歴と症状について
脊髄梗塞とは
脊髄梗塞の一般的な治療方法
再生医療「幹細胞治療」を使った脊髄損傷後遺症の治療
当院の幹細胞治療の流れ
費用について
再生医療のメリットとデメリット
まとめ
YouTubeでも医療知識を紹介しています
┃石川翔投手の経歴と症状について
石川選手は、1999年生まれのプロ野球選手。栃木県佐野市の青藍泰斗高時代に151キロをマークして本格派右腕として注目を集めると、2017年にはドラフト2位で中日ドラゴンズに入団。しかし入団後は怪我が続き、成績が振るわず。2023年に右ひじの内側側副靱帯再建術、通称”トミー・ジョン手術”を受け、2024年に復帰するものの2025年に戦力外通告を受けました。
その後、2026年1月6日(日本時間7日)にメキシコリーグのサルティーヨ・サラペメーカーズへの入団を発表。半年後には日本に戻り、2026年5月19日付でプロ野球ファーム・リーグのハヤテベンチャーズ静岡に入団しました。
脊髄梗塞を発症したのは、ハヤテベンチャーズ静岡入団が発表された直後。「コンビニにいた時、突然腰から下の感覚がなくなりそのまま救急搬送されました」と自身のInstagramで報告しています。発症直後は腰から下の感覚が全くなく、動かすことはもちろん、尿や便の感覚もなかったそうです。
当時の気持ちを石川選手はこのように語っています。「正直、この状態からまた歩けるようになることが、今はまだ想像できません。不安だし、怖いです。でも、あと少しで妻との新しい命が誕生します。妻と子供のためにも、せめてまた歩けるようになりたい。そして、もちろんもう一度野球もしたいです。簡単な道のりではないと思います。それでもまた前を向いて、自分らしく進んでいきます」。
<発症~2か月後の治療経過>
リハビリの甲斐あって、発症から約10日後には右足の親指を動かしている様子を、約1か月後には両足の足首を動かしている様子を投稿しました。さらに約2か月後には歩行器を使って院内を歩く後ろ姿を「日々の成果です!」という言葉とともに投稿しています。
┃脊髄梗塞とは
そもそも「脊髄梗塞」とはどのような病気なのでしょうか? 脊髄梗塞とは脊髄の血管が詰まってしまい、その周辺の神経細胞の酸素や栄養が不足することで壊死が起きてしまう症状です。結果、脊髄神経の機能が失われてしまい、体には麻痺や感覚障害などの症状が発現します。
┃脊髄梗塞の一般的な治療方法
脊髄梗塞が発見された段階に応じて治療計画が立てられます。また出現している症状によってもどのよう治療方法を組み合わせるかが変わってきます。
ここでは代表的な治療法についてまとめました。
<薬物療法>
脊髄梗塞の治療で重要なのは、周辺組織が壊死を起こす前に血流を改善し、重症化させないことです。そのため早期発見した場合は、脊髄梗塞の進行を抑えるため「血栓溶解療法」を行います。
血栓溶解療法は、血管に詰まった血栓を溶かす薬を点滴で投与する治療法。脊髄梗塞は発症直後であればあるほど、神経細胞のダメージを最小限に抑え、後遺症を残さずに回復できる可能性が高まります。そのため発症後4.5時間以内に治療開始するのが望ましいです。また治療後は、再発予防のために血液をサラサラにする「抗血小板薬」や「抗凝固薬」を使って血栓が作られないようにします。
<手術療法>
薬物療法や、血管そのものに問題がある場合は手術もあります。
【血管内治療】
カテーテル(細い管)を用いた手術。足の付け根などの血管からカテーテルを挿入。血管内の詰まっている場所まで到達させて、血流を再開させる方法です。
【バイパス手術】
詰まった血管部分を迂回するようにして、別の血管をつなぎ合わせることで血流を再開させる方法です。
<リハビリテーション>
脊髄損傷を発症した直後は薬物療法や手術療法で治療を行いますが、壊死した神経はもとに戻りません。そのため多くの場合、後遺症が残ってしまいます。そのため、容体が安定してきたら麻痺の残った部分に応じたリハビリテーションを行います。
┃再生医療「幹細胞治療」を使った脊髄損傷後遺症の治療
脊髄損傷を発症して治療したとしても、多くの患者が悩まされるのが後遺症。血流が改善しても、壊死してしまった神経細胞は自然に修復することはありません。そのため麻痺などと付き合っていかなければいけませんでした。
しかし近年、再生医療の研究が進展し、神経細胞も再生できる可能性が高まってきています。神経細胞の再生には「幹細胞」を使います。
<幹細胞治療とは>
幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができるのではないかと注目を集めています。
幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。
幹細胞治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与など、適切な方法で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。
┃当院の幹細胞治療の流れ
当院で行っている幹細胞治療の流れを紹介します。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。
<①カウンセリング>
事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。
<②検査>
感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。
<③脂肪採取>
腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです
<④幹細胞の培養>
脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。
<⑤幹細胞の静脈内投与、局所投与>
培養した幹細胞を点滴、局所に投与します。
<⑥経過観察>
その後の効果について定期的に経過観察を行います。
┃費用について
医師による診察・カウンセリング:11,000円
感染症検査(採血):11,000円
幹細胞点滴(1億個):1,650,000円
※すべて税別
※自費治療
┃再生医療のメリットとデメリット
<メリット>
- 患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
- 今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
- 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます
<デメリット>
- 自由診療のため保険が適応されません
- 新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
- 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります
┃まとめ
神経細胞のように傷つくと自然に再生しない機能も、再生医療の発展によって回復できるようになってきました。数十年前には「難しい」と断られてしまった症状でも、今では治すことができるかもしれません。脊髄梗塞の後遺症に悩まれている方は、当院にお気軽にご相談ください。
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