腰痛と言っても、根本原因は人それぞれ。そのため一般的に腰痛は、血流が悪くなりがちな寒い時期に悪化するケースが多いのですが、場合によっては夏に痛みがひどくなることもあります。この記事では、暑い時期に発生する腰痛の原因やメカニズム、その時期に予防したり、悪化させないためのポイントを解説します。
<コラム監修者>
田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.夏に起こりやすい腰痛の原因
暑い時期に起こる腰痛の原因として、自律神経の乱れが挙げられます。冷房による体温調節の乱れや、過剰に冷たい食べ物や飲み物の摂取、脱水症状などが関係していると考えられています。また慢性的な運動不足による筋力低下も要因として複合的に作用することで、血行不良や筋肉の硬直を引き起こし、腰痛を発症します。
<夏に腰痛を引き起こす要因>
【冷たい飲み物や食べ物を摂取する】
アイスや冷たいドリンクなど、冷たいものを体内に取り込むと、内臓が冷えて自律神経のバランスが崩れてしまうほか、内臓に負担がかかり、疲弊してしまいます。膵臓や腎臓など、腰に近い臓器の不調や、体が冷えることで、血流が悪化し、筋肉硬直を起こしやすくなってしまいます。
【屋内外の寒暖差】
夏は冷房をかけるため、屋外との寒暖差が激しくなってしまい、自律神経が乱れてしまいます。また冷房を使用した場所に居続けて、肌の表面の温度が下がると、体温を保とうと血管が細くなり、血流が滞ります。その結果、筋肉のこわばりが発生してしまい、腰痛が発生してしまうことがあります。
【脱水症状】
暑い時期は、汗をたくさんかくので夏は脱水状態に陥りやすいです。筋肉や関節の潤滑が低下することで、腰痛を引き起こすことがあります。このほか、脱水状態に陥ったことで脱水状態に陥ると尿が濃くなり結石ができやすくなるため、尿路結石になりやすい時期でもあります。尿路結石は、結石が腎臓から尿道まで続く「尿路」に詰まる病気。尿路結石は、急激な腰痛に見舞われることも。
┃2.夏の腰痛を予防する過ごし方のポイント
夏の腰痛を予防するためには、身体を冷やさないことが重要。ここではポイントを4つにしぼってご紹介します。
<①冷たい食べ物・飲み物の摂取頻度を減らす>
過剰に冷たいものを摂取しすぎないようにしましょう。火照った体を冷やすために冷たい飲み物は効果的ですが、飲むタイミングや冷やしすぎないなどの配慮も有効です。
<②冷房を適切な温度に設定する>
環境省は快適性を維持し、省エネを図るための設定温度として28℃を推奨しています。ただし、外気温や湿度などで快適な温度には個人差があるため、そこを基準に調整するのがいいでしょう。標準的な設定温度は25~28℃とされています。
<③身体を温めて体温調節する>
身体を温めるためには、湯船に浸かるのがおすすめです。湯船に浸かると身体が芯から温まって筋肉がほぐれ、腰痛が和らぎます。
<④水分補給を心がける>
脱水状態を避けるためにも水分補給を心がけましょう。一度に大量の水を飲むのではなく、こまめに少しずつ飲むこともポイントです。そのとき、利尿作用があるカフェイン入りの飲み物や、糖分を含む清涼飲料水は適量に留めることをおすすめします。
┃3.長引く腰痛には他の原因があるかも?
夏の腰痛は自律神経の乱れが関係しています。これは生活習慣の影響が多いということもあり、これまで紹介したことに注意することで自然と自律神経も整っていきます。しかし、それでも慢性的な腰痛に悩まされている、悪化したなどありましたら、根本的な原因が違う可能性があります。
腰部分の背骨自体に何かしらの原因がある場合、日帰り手術で治療することが可能です。当院で取り扱っている腰痛の日帰り手術をご紹介します。
<PLDD>
【対応する疾患】
- 椎間板ヘルニア
【治療詳細】
PLDDはレーザーを椎間板内の髄核に照射することで、椎間板を縮小し、神経の圧迫を軽減することで痛みを改善する治療です。施術に要する時間は一箇所あたり15~30分程度で、院内の滞在時間も数時間程度で済むため、日帰りでの手術が可能です。
<PDR>
【対応する疾患】
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症 など
【治療詳細】
PDRは経皮的椎間板再生治療ともいい、患者自身の血液を採取した後、そこから濃縮血小板由来の成長因子を抽出。濃縮血小板由来の成長因子(PRP)と幹細胞上清液を患部の椎間板に注入し、透視装置を使って損傷した椎間板に成長因子と幹細胞上清液を投与します。PLDDと併用することも可能で、日帰りで手術を受けることができます。
<PED>
【対応する疾患】
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症 など
【治療詳細】
PEDは、経皮的内視鏡下椎間板摘出術とも呼ばれる手術。細い内視鏡を使って行う手術で低侵襲なのが特徴です。手術は日帰りで受けることができるほか、術後の生活への影響も少ないとされています。
<PEL>
【対象の疾患】
- 腰部脊柱管狭窄症
- すべり症 など
【治療詳細】
PELは全ての手術操作を内視鏡下に行う手法であり、体を大きく傷つけずに脊椎内部の奥深いところを観察し、より安全に手術操作が可能となるのが大きな特徴です。
┃4.まとめ
腰痛は寒い時期だけでなく、夏に悪化する場合もあります。冷たい食べ物や飲み物、冷房のかけすぎで身体を冷やすと痛みが悪化しやすくなるため、身体を冷やさない生活習慣が夏の腰痛予防のポイントです。対策を行っても腰痛が改善しない場合は、無理せず腰痛クリニックや、近くの専門医に相談することをおすすめします。