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2025.06.08

再生不可能とされていた椎間板が修復できる⁉ 幹細胞治療による再生医療で腰痛改善

近年、椎間板を再生させる幹細胞治療が登場し、注目を集めています。椎間板に関する症状は自然に軽減する場合もありますが、中には長期間悩まされるケースもあります。幹細胞治療は、ほかの治療法では十分な効果が得られなかった方でも症状の改善が見込める新しい選択肢です。この記事では、椎間板が壊れる原因や椎間板に関連する症状の例、さらに幹細胞治療のメカニズムやメリット・デメリットを解説します。

<コラム監修者>

田中聡院長

田中聡(たなか さとし)

表参道総合医療クリニック院長


大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。日本脳神経外科学会認定 日本脳神経外科専門医として、現在は多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。

┃1.椎間板って何?

椎間板は、背骨の骨と骨の間に挟まれた軟骨です。クッションのような役割を果たしており、背骨にかかる衝撃を吸収したり、動きをスムーズにしたりといった機能を持っています。

椎間板はゼリー状の物質で弾力性とクッション機能を担う「髄核」と強い繊維性の組織で髄核を保護する「線維輪」で構成されています。椎間板内部には血管がないため、血液による栄養供給がほとんどありません。そのため一度、損傷してしまうとなかなか回復しない組織としても知られています。

┃2.椎間板が壊れる原因

椎間板の中心には、髄核という柔らかい組織があります。子どもの髄核はゼリー状で弾力がありますが、年齢とともに水分量が減少し、クッション性が失われていきます。水分量が減った椎間板は衝撃に弱くなり、日常生活で継続的に負荷がかかったり強い力がかかったりすると、亀裂や変形が生じてしまいます。

下記では椎間板が損傷する主な要因と、詳細について詳しく説明します。

<椎間板が損傷する要因>

【加齢】

加齢に伴い、椎間板の水分量が低下。弾力性が低下し、損傷しやすくなります。

【重労働や長時間のデスクワーク】

長時間の座り仕事や、不適切な姿勢での長時間の作業、日常的に重いものを持ち上げるなどすると、椎間板に過度な負荷をかけて、損傷のリスクを高めます。

【スポーツによる負荷】

ジャンプ動作を伴うバレーボールやバスケットボール、腰をひねったり曲げたりする動作の多い砲丸投げややり投げなどは腰に負担をかけてしまうので、腰椎を損傷するリスクが高まります。

【交通事故など】

交通事故や転倒などの外傷は、そのときの衝撃のかかり方で椎間板にダメージを与えることがあります。

┃3.椎間板が関わっている症状とは?

椎間板に異常が生じると、その周辺に痛みやしびれなどの症状が現れます。さらに、変形した椎間板が神経を圧迫すると、患部から離れた部位にも症状が出ることがあります。

【腰椎(腰)の症状】

  • 腰痛
  • 下肢痛
  • 脚の動かしづらさ
  • 前かがみになると症状が強くなる など

【頚椎(首)の症状】

  • 首、肩、上腕、肩甲骨の痛みやしびれ
  • 指の動かしづらさ
  • 歩きづらさ
  • 排尿トラブル など

<椎間板が関わる病気について>

椎間板が壊れることで、腰痛や手足のしびれなど、様々な症状が出現します。ここでは椎間板が変形することが原因の病名をご紹介します。

【椎間板ヘルニア】

●症状

線維輪に亀裂が入って髄核が飛び出し、神経を圧迫する病気です。発症する位置によって、腰のあたりに生じる「腰椎椎間板ヘルニア」、胸のあたりに生じる「胸椎椎間板ヘルニア」、首のあたりに生じる「頚椎椎間板ヘルニア」の3種類に分けられます。症状はヘルニアの位置によって変わります。最も発症頻度が高い腰椎椎間板ヘルニアでは主に腰、お尻、下肢に痛みやしびれが生じます。さらに進行すると、脚の脱力感や排尿・排便トラブルが生じる場合もあります。前かがみの姿勢や、椅子に座る姿勢で症状が強くなることも特徴的です。

●従来の治療方法

ヘルニアは自然に吸収されて症状が落ち着く場合もあるため、まずは鎮痛薬の内服のほか、患部の神経付近に麻酔を注入する神経ブロック注射、ストレッチや筋力トレーニングを行う理学療法などで様子を見ます。それでも症状がおさまらない場合や、下肢の麻痺が進行している場合は手術を検討します。術式にはいくつか種類がありますが、飛び出した椎間板を手術で摘出する「椎間板摘出術」が一般的です。

>>「椎間板ヘルニア」をセルフチェックしてみる

>>「椎間板ヘルニア」治療済みでも再発の可能性が…セルフチェックで調べる

【腰部脊柱管狭窄症】

●症状

背骨の中心に位置し、神経の通り道でもある「脊柱管」が狭くなる「脊柱管狭窄症」のうち、腰に起こるものが「腰部脊柱管狭窄症」です。発症すると脊柱管を通る神経が圧迫され、お尻から下肢にかけての痛みやしびれ、力の入りにくくなるといった症状が出ます。また、間欠性跛行も特徴的な症状です。間欠性跛行は、歩いていると脚の痛みやしびれが出て歩けなくなり、しばらく休むと症状がおさまって再び歩けるようになる症状です。排尿・排便トラブルが起こる場合もあります。

●従来の治療方法

まずは保存療法を行って様子を見ます。症状の強さに応じて、血行を良くする薬や鎮痛薬による薬物治療のほか、ウォーキングなどの運動療法、コルセットなどの装具を装着する装具療法、神経ブロック注射などを行います。保存療法で症状が改善しない場合、神経の圧迫を軽減させる手術「除圧術」を検討します。

>>「腰部脊柱管狭窄症」をセルフチェックしてみる

【腰椎すべり症】

●症状

椎間板や背骨の関節がゆるみ、腰椎が前後にずれる病気です。脊柱管が狭くなり神経が圧迫されることで、さまざまな症状が出ます。出現する症状として代表的なのが間欠性跛行であるのなど、腰部脊柱管狭窄症の症状と似ているのも特徴です。腰痛がある場合もありますが、まったく痛みのないケースもあります。進行すると、歩行時以外も脚の痛みやしびれが生じます。

●従来の治療方法

腰部脊柱管狭窄症と同様に、まずは保存療法を行います。薬物治療、運動療法、装具療法、神経ブロック注射で症状を抑えるほか、生活の中で腰に負担のかかる姿勢や動作を避けることも重要です。保存療法で症状が改善しない場合や日常生活に支障がある場合、除圧術などの手術を行い、根本原因を取り除きます。

>>「腰椎すべり症」をセルフチェックしてみる

【変形性腰椎症】

●症状

椎間板が傷んで背骨の関節がゆるみ、腰椎や関節が変形してトゲ(骨棘)ができる病気です。40歳以上の人に多い病気ですが、スポーツや力仕事が原因で若年層に発症する場合もあります。軽度の変形性腰椎症は無症状の場合もありますが、進行すると腰痛や腰の重さ、お尻から下肢にかけてのしびれが現れます。椎間板の変性によって脊柱管が狭くなり、脊柱管狭窄症の症状が出ることもあります。

●従来の治療方法

手術による根本的な改善は難しいため、鎮痛薬の内服や装具療法、神経ブロック注射などの保存療法で症状を和らげます。腰の負担を軽減するためのストレッチや体幹強化も重要です。腰を温める温熱療法や、電気刺激で痛みを和らげる電気療法が行われる場合もあります。変性が大きく神経が圧迫されている場合、腰部脊柱管狭窄症と同様に除圧術を行うこともあります。

>>「変形性腰椎症」をセルフチェックしてみる

┃4.修復不可能だった椎間板を再生させる「幹細胞治療」とは

椎間板の治療は、病気によって様々な方法がありますが、いずれの治療も根本原因を取り除いたとしても、椎間板自体の修復は難しかったり、椎間板が損傷したことでダメージを与えてしまった神経などは元に戻りません。

しかし近年、再生医療の研究が進んだことによって、これまで修復が難しいとされてきた箇所の治療ができる可能性が高まってきました。当院では、再生医療の中でも「幹細胞」を使った治療に取り組んでいます。

幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足したりした細胞の代わりとなる未分化の細胞です。身体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。

患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。「幹細胞治療」では、培養した細胞そのものを患部に注入します。

>>幹細胞治療について

また、培養した際に生じる培養上清液には、幹細胞から放出されるサイトカイン(成長因子、神経保護因子、血管新生因子など)が多数含まれているため、これを治療に使用することもあります。それを「サイトカインカクテル療法」と呼びます。

┃5.当院の治療の流れ

当院では、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を取り出し、培養したうえで投与する再生医療「ASC療法」を行っています。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

<①カウンセリング>

事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

<②検査>

感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

<③脂肪採取・血液採取>

腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

<④幹細胞の培養・PRPの抽出>

幹細胞を使った治療の場合、脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。PRP療法の場合、採血を行い、その後遠心分離機にかけて、PRP(多血小板結晶)を抽出します。。

<⑤幹細胞・PRPの局所投与>

培養した幹細胞やPRPを投与します。

<⑥経過観察>

治療後の効果について定期的に経過観察を行います。治療効果を確認しながら、リハビリを併用します。

┃6.費用について

再生医療は保険適用外の自由診療となります。費用の一例は以下の通りです(すべて税込)。

項目 価格
医師による診察・カウンセリング 11,000円
感染症検査(採血) 11,000円
幹細胞培養上清神経修復治療 1か所44万円
脂肪由来幹細胞点滴投与 1回165万円

┃5.再生医療のメリットとデメリット

幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

<メリット>

  • 患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
  • 今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
  • 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

<デメリット>

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