「ある日突然、強烈な頭痛に襲われた」「救急搬送されて気づいたらICUにいた」
――そんな体験談が多いのが「くも膜下出血」です。命の危険にも関わることのある病気で、放置すると最悪の事態になりかねません。一命を取り留めたとしても、後遺症などに悩まされる方も多いのが特徴です。今回は、そんなくも膜下出血の原因や症状のほか、再生医療を使った後遺症治療についてご紹介します。

┃1.くも膜下出血とは？

くも膜下出血とは、脳を覆う「くも膜」と「軟膜」の間にある空間「くも膜下腔」で、出血が起こる病気です。多くは脳の動脈がこぶ状に膨らんだ「脳動脈瘤（のうどうみゃくりゅう）」の破裂が原因。発症すると、突然の激しい頭痛や、嘔吐、意識障害などが起こります。致死率が高く、生存したとしてもくも膜下出血患者の内、7割は脳に重大なダメージが残り、後遺症に悩まされることもあります。また再発のリスクが高いことでも知られています。

＞＞動脈硬化について

【くも膜下出血の主な症状】

• 突然の激しい頭痛
• 吐き気及び嘔吐
• 意識消失やけいれん
• 瞳孔の左右差や麻痺

＜脳動脈瘤とは＞

脳動脈瘤とは、脳の動脈がこぶ状に膨らんだもので、脳の血管が枝分かれする部分に多く発生します。多くは未破裂の状態で発見されても無症状です。しかし大きくなると、周囲の脳組織や神経を圧迫して、頭痛や視力の異常などを引き起こします。

脳動脈瘤ができる原因として、高血圧や喫煙、動脈硬化、遺伝的な要因などが挙げられていますが、決定的な要因はまだわかっていません。

┃2.回復後に残る「後遺症」とは？

くも膜下出血は命が助かったとしても、今まで通りの生活に戻れる人は3割とされています。出血による周辺組織の損傷により後遺症が残るからです。また、くも膜下出血の治療のために行う手術操作に関連して脳梗塞を起こし、言語障害、半身麻痺、痺れなどが発生することもあります。いずれにしても、病気発生後の生活には、大きく影響します。

特に思考や記憶、言語、注意などの機能に障害が起きる「高次脳機能障害」は、外見からわかりにくいので、周囲に理解されにくい性質を持っています。

＜主な後遺症＞

症状	詳細
半身麻痺	くも膜下出血を発症した箇所が右脳の場合は左半身に、左脳の場合は右半身に麻痺やしびれが残ります。
言語障害	話したり、言葉を理解する力が低下します。
認知機能障害	記憶力、集中力、認知機能が低下します。
うつ状態	感情の起伏が激しくなり、コントロールが難しくなります。

┃3.リハビリや薬だけでは治療に限界も

現在、くも膜下出血の治療として主流のリハビリや薬物療法は、あくまでも対処療法に過ぎません。ただし、これらはあくまで「今ある機能の維持や補完」を目的としたもので、死んだ脳細胞を回復させるための根本的な治療ではないので、くも膜下出血発症前の状態を取り戻すことは難しいとされてきました。そのため「脳細胞は一度壊れると再生しない」「リハビリで一定の回復は期待できても、機能そのものを修復するのは難しい」というのがこれまでの定説でした。

しかし、近年の医療分野の研究が進み、脳組織や神経を再生できる可能性が出てきました。そこで注目されているのが「再生医療」です。

┃4.再生医療の「幹細胞治療」で脳は再生できるのか？

再生医療とは、本来自分の体に備わっている「再生力」を活用して、壊れた組織の修復を目指す治療法です。

＜幹細胞治療とは＞

幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる未分化の細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。再生が困難とされていた神経や血管、免疫系にも作用すると言われており、損傷した脳神経の回復促進にも作用することがわかってきました。

当院の幹細胞治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。

＞＞幹細胞治療について

＜くも膜下出血に対して再生医療・幹細胞治療の論文＞

※引用文献より抜粋

くも膜下出血の認知機能障害を間葉系幹細胞由来エクソソームの経鼻的投与法によって改善できる事を動物モデルにて証明しました（Experimental Neurology誌）。エクソソームの経鼻的投与は、認知機能障害を改善させうる治療。

┃5.表参道総合医療クリニックの幹細胞治療の流れ

当院では、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を取り出し、培養したうえで投与する治療を行っています。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

＜①カウンセリング＞

事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

＜②検査＞

感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

＜③脂肪採取・血液採取＞

腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

＜④幹細胞の培養・PRPの抽出＞

幹細胞を使った治療の場合、脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。PRP療法の場合、採血を行い、その後遠心分離機にかけて、PRP（多血小板結晶）を抽出します。

＜⑤幹細胞・PRPの神経根局所投与、髄腔内投与＞

培養した幹細胞や、抽出したPRPを脊髄の枝である神経根に局所投与もしくは髄腔内に投与します。

＜⑥経過観察＞

治療後の効果について定期的に経過観察を行います。治療効果を確認しながら、リハビリを併用します。

┃6.表参道総合医療クリニックの治療の特徴

＜特徴①：髄腔内投与にも対応＞＞

脳脊髄液に直接近づけることで、幹細胞がより効率よく作用する可能性があるとされています。

＜特徴②：先端リハビリと併用＞

細胞治療に加え、機能回復を促す物理療法を組み合わせることで、さらなる効果を期待できます。

┃7.治療費について

再生医療は保険適用外の自由診療となります。費用の一例は以下の通りです（すべて税込）。

項目	価格
医師による診察・カウンセリング	11,000円
感染症検査（採血）	11,000円
PRP神経修復治療	1か所55万円
幹細胞培養上清神経修復治療	1か所44万円
幹細胞培養上清髄腔内投与	1回 55万円
脂肪由来幹細胞点滴投与	1回165万円
脂肪由来幹細胞髄腔内投与	1回198万円

┃8.再生医療のメリットとデメリット

幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

＜メリット＞

• 患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
• 今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
• 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

＜デメリット＞

• 自由診療のため保険が適応されません
• 新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
• 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります

┃9.まとめ

くも膜下出血の後遺症は、患者さん本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を及ぼします。「もう元には戻らない」と諦める前に、幹細胞治療という新しい選択肢があることを知ってほしいです。表参道総合医療クリニックでは、医学的根拠に基づいた再生医療を、オーダーメイドでご提案しています。もしも悩んでいる方がいましたらお気軽にご相談ください。

くも膜下出血

再生医療とは