
再生医療の中でも、幹細胞を使った治療が注目を集めています。幹細胞といっても、様々な種類があります。今回は、幹細胞の種類やどのような効果があるのかなどをまとめました。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.幹細胞とは
幹細胞とは、体が損傷したときに、自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足したりした細胞の代わりとなる細胞。体内では、傷ついた組織の修復、細胞の補充や入れ替えを行うだけでなく、身体の機能を維持、再生する「ホーミング効果」も担っています。
主な働きについて下記にてまとめました。
<組織の維持と再生>
身体のあらゆる組織を維持したり、損傷個所を再生させるために必要不可欠なのが、「自己複製能」と「多分化能」という能力です。幹細胞はこの2つの能力を併せ持っており、様々な状況に対応します。
【自己複製能】
幹細胞が細胞分裂を行うことによって、自分と全く同じ能力を持つ未分化な幹細胞を作り出す能力です。また分裂した幹細胞は未分化の状態を長期間維持する能力も持っています。これらの能力によって、体内の幹細胞の数が減少することなく、必要なときに、必要な分だけ各組織の細胞を供給し続けることを可能にし、いつでも再生や修復ができるようになっています。
【多分化能】
幹細胞が脳や筋肉、血液など、特定の復習種類の組織や細胞に変化(分化)する能力。ただし、あくまでも特定の系統に限定された細胞に分化する能力であり、何にでもなれるわけではありません。
<傷ついた組織の修復>
細胞や組織が傷ついた場合、幹細胞には損傷箇所から発せられるサインを受信する機能が備わっています。サインを受け取ると、血流に乗ってサインの発信箇所に自動的に集まり、修復と再生を行います。これを「ホーミング効果」と呼びます。
<サイトカインの分泌>
幹細胞は、自身が分化するだけでなく、周りの細胞に対して「サイトカイン(成長因子)」を分泌します。サイトカインは、「免疫の司令塔」とも呼ばれる物質で、周りの細胞が炎症を抑えたり、組織の血管を新しく作る動きを促したりする効果があります。これによって、組織全体の回復をサポートします。
┃2.幹細胞の種類
幹細胞は主に、特定の細胞に分化できる「組織幹細胞」と、あらゆる細胞に分化できる「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。
<組織幹細胞>
体内の特定の組織に存在する細胞で、古くなった細胞に変わって補充したり、損傷した細胞を修復したりする幹細胞です。ただし、部位や存在する組織によって分化できる細胞の範囲は限られています。
【造血幹細胞】
主に骨髄に存在する幹細胞で、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞に分化することができます。
【間葉系幹細胞】
骨髄、脂肪組織、歯髄、へその緒などに存在する幹細胞で、骨、軟骨、脂肪、筋肉などに分化することができます。また強力な抗炎症、免疫調整機能、血管新生作用を持っており、損傷した組織の修復促進にも役立ちます。
【神経幹細胞】
成人後の脳内においては、海馬の歯状回(しじょうかい)と側脳室付近の脳室下帯(のうしつかたい)という限られた領域に存在する幹細胞。脳や脊髄を構成する「神経細胞(ニューロン)」や、それらを支える「グリア細胞」に分化する能力を持ちます。胎児期には脳を形成する役割を担います。成長後は側脳室や海馬に存在し、記憶や学習の手助けをするほか、脳損傷の修復にも役立ちます。
【上皮幹細胞】
主に皮膚を指す「表皮」だけでなく、腸、肺といった臓器の表面部分を構成する組織や、外分泌腺を形成する「腺房細胞」などに存在する幹細胞で、損傷したり劣化した組織は常に新しく入れ替えられます。皮膚は約4週間、腸管は3~5日というサイクルで細胞を更新し、組織を機能を維持します。
<多能性幹細胞>
胎盤などの胎外組織を除く、さまざまな組織の細胞に分化する能力を持ちます。中でも代表的な2つの細胞をご紹介します。
【ES細胞】
胚性幹細胞(ES細胞:Embryonic Stem Cell)は、受精卵が細胞分裂を繰り返した「胚盤胞」の中にある「内部細胞塊」を培養して作られます。ただし、生命の始まりである受精卵を破壊しなければならないため、倫理的な課題があるとされています。
【iPS細胞】
人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced Pluripotent Stem cell)は、皮膚や血液などの熟成した体細胞に数種類の遺伝子を人工的に組み込み、初期化させることで、多様な組織や臓器へ分化できる能力を持たせた細胞。2006年に山中伸弥が世界で初めて作製に成功しました。ES細胞と同様の多能性を持っているだけでなく、患者自身の細胞から作ることができるため、免疫拒絶のリスクが低いだけでなく、ES細胞の課題である倫理的問題もクリアすることができます。
┃3.幹細胞を使った治療の可能性
様々な細胞に分化する可能性を秘めた幹細胞は、これまで難病とされてきたり、修復や再生が不可能だとされたりした症状を治療することができるかもしれません。そのため、幹細胞を使った再生医療は、様々な研究が進められ、注目を集めています。
当院では、間葉系幹細胞を使った幹細胞治療を提供しています。患者様の脂肪組織を採取し、それを元に培養を行うため、副作用などのリスクも少ないのが特徴です。
手術後の組織の修復や、神経痛などの後遺症、膝軟骨の再生にも有効的であることが認め得られています。
当院の実際の症例もまとめていますので、気になる方はぜひご覧ください。
┃4.まとめ
幹細胞を活用した治療方法によって、これまで「不治の病」とされてきたものも、それが覆る日が来るかもしれません。また再生医療は、日々研究が進められている分野。過去に「対応が難しい」とされていても、もしかしたら新たな可能性が生まれていることも。もしも、気になることがあればお気軽にご相談ください。
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