
「肺線維症」とは肺の炎症などによって膨らみにくくなってしまい、酸素を取り込みにくくなってしまう進行性の難病です。初期症状がないことがほとんどで、知らないうちに悪化してしまっていることも。今回は肺線維症についてと、近年研究が進められている再生医療についてまとめました。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.肺線維症とはは
「肺線維症」とは肺が、炎症などによって厚く、硬くなってしまうことで、膨らみにくくなってしまい、酸素を取り込みにくくなってしまう進行性の難病です。
吸った空気は、気道を通り、最終的には肺の奥にある「肺胞」という場所に運ばれて、酸素を取り込んだり、二酸化炭素を排出したりしています。このときに重要なのが、肺胞の中にある「間質」という組織。これは肺胞の中にある薄い壁のような役割をしており、毛細血管が無数に張り巡らされています。この間質の毛細血管を流れる血液が酸素を吸収したり、いらなくなった二酸化炭素を排出したりする役割を担っているのです。
間質が炎症を起こすと、「線維化」と呼ばれる現象が起きます。これは肺が硬くなって膨らみにくくなるだけでなく、毛細血管も現象し、血液へ酸素を取り込みにくくなります。間質で炎症が起きる病気の総称を「間質性肺炎」といって、特に間質の線維化が慢性的に進行してしまい、元に戻らなくなった状態を「肺線維症」と呼びます。
┃2.肺線維症の初期症状
肺線維症は原因不明であることがほとんどです。初期症状も無症状なことが多く、原因不明のまま、数年単位で徐々に悪化していきます。
進行していくと下記のような症状が発生します。
- 痰が絡まない乾いた咳が出る(空咳)
- 階段や坂道などですぐに息が切れる
- 疲れやすくなる
- 進行すると指先が太くなる「ばち指」が見られる
<考えられるリスク>
肺線維症を引き起こす考えられるリスクをまとめました。
- 喫煙
- 長期間、粉塵や有害物質を吸引している
- 膠原病を伴う場合
- ウイルス感染
- 放射線や薬の副作用 など
┃3.肺線維症と再生医療
肺線維症と密接な関係にある間質性肺炎に対する再生医療の研究は日々進められていますが、現状は研究段階であり、一般的な治療としてはまだ確立されていません。
しかし、再生医療の効果が出たという研究は数多く報告されています。
<報告①骨髄由来幹細胞治療>
広島大学が2024年に発表した論文によると、間質性肺炎を起こしたマウスに骨髄由来の幹細胞の一種であるALDHbr細胞を投与したところ、間質性肺炎が改善することを初めて確認したとのことです。
参考>>広島大学「【研究成果】骨髄から抽出した細胞の一種が、間質性肺炎の治療に有効であることを発見 ~男性より女性の細胞の方が効果が高い?!~」
<報告②疾患特異的iPS細胞>
京都大学iPS細胞研究所では、遺伝性間質性肺炎の原因として知られている肺のサーファクタントタンパク質の構成成分の1つSP-Cコードする遺伝子SFTPC(surfactant protein C )のバリアントが引き起こす細胞表現型を指標として、化合物スクリーニングを行ったそうです。患者さんから樹立したiPS細胞から分化させた肺胞上皮細胞を用いて、治療薬候補化合物を同定しました。さらに肺胞オルガノイドを用いて薬効を評価しました。
参考>>京都大学「疾患特異的iPS細胞を用いて遺伝性間質性肺炎の治療薬の候補化合物を発見―遺伝性間質性肺炎の治療薬スクリーニング法の開発に成功―」
<報告③皮下脂肪由来CD73陽性細胞>
順天堂大学大学院医学研究科の研究活動の報告で、肺線維症モデルマウスの肺の線維化が形成される時期に、皮下脂肪由来CD73陽性細胞を複数回点鼻投与したところ、肺の線維化を抑制する可能性があることを明らかにしたとのことです。
参考>>順天堂大学「CD73陽性細胞の移植により肺線維化の軽減に成功~ 免疫寛容の誘導による肺線維症の新規治療法の開発に期待 ~」
┃4.当院の幹細胞治療
幹細胞は体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足したりした細胞の代わりとなる細胞です。
幹細胞は、特定の細胞に分化できる「組織幹細胞」と、あらゆる細胞に分化できる「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも、間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化できます。
当院の幹細胞治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、痛みが出ている部位に注射することで傷ついた組織の修復をめざします。
┃5.まとめ
間質性肺炎は、これまで線維化の進行を抑えるための薬を服用したり、炎症を抑えるためにステロイドなどを投与するほか、酸素療法などの対症療法しか治療法がありませんでした。しかし、再生医療の研究の進展によって、治療の可能性の幅が増える兆しが見えてきました。
当院では、様々な症状に対しての幹細胞治療を行っています。お悩みの方はお気軽にご相談ください。
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