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2025.12.21

右膝靭帯の怪我した大関琴桜が治療に採用した再生医療「PRP療法」とは

2025年9月の秋場所の取組で、右膝の怪我を負い、途中休場した大関琴桜。診断結果は全治3週間の右膝内側側副靱帯損傷でした。約1か月後に行われる11月の大相撲九州場所の出場も危ぶまれましたが、再生医療の1つである「PRP療法」を行い、靭帯を回復させて復帰することができました。今回は琴桜関の怪我の経緯から、治療法に採用された再生医療「PRP療法」について解説します。

<コラム監修者>

田中聡院長

田中聡(たなか さとし)

表参道総合医療クリニック院長


大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。

┃1.琴桜関の怪我と治療法

琴桜関が右膝を怪我したのは、2025年9月の秋場所13日目、9勝目を挙げた横綱豊昇龍戦。怪我をした当初、所属部屋の佐渡ケ嶽親方は琴桜関の状態に関して「膝が曲がらない。そんきょ(つま先立ちで深く腰を落として両膝を開く姿勢で、試合前に取る礼の姿勢)もできない」と話していました。

翌日の秋場所14日目(9月27日)には「右膝内側側副靱帯(じんたい)損傷により全治3週間の見込み」との診断書を提出して休場。9月29日にはMRI検査やCT検査を受けて、靭帯の断裂がないことを確認したそうです。

損傷している靭帯の修復を図るため、治療方法にはPRP療法を採用。10月2日の両国国技館で佐渡ケ嶽親方は「内出血も早く引いた。だいぶ歩けるようになってきて、歩き方も普通に近い。いい感じで治ってきている」と説明しました。また大相撲九州場所までにはPRPを2回打ったそうで、佐渡ケ嶽親方は11月6日に「再生医療がバッチリ合った。2回打って(靱帯が)元に戻った感じ」と琴桜関の状態を代弁するコメントを出しています。

結果、11月9日から行われた大相撲九州場所の土俵に上がり、8勝7敗の勝ち越しで場所を終えました。

┃2.PRP療法とは

PRP(Platelet-rich plasm)とは、日本語に訳すと多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)といって、血小板を濃縮させたものです。血小板にはさまざまな効果をもたらす細胞で、周りの細胞に働きかけて組織の修復を促す働きを持っています。

この作用を利用したのが、患者さん自身の血液を使って行う再生医療「PRP療法」。患者さんから採血を行った後、採取した血液から血小板を抽出・濃縮し、それを患部に注射して、損傷している組織の修復を促します。

また炎症を抑える作用も期待できるため、痛みを軽減する効果も見込めます。

┃3.スポーツ外傷治療の新しい選択肢

スポーツをしていると、日常生活以上の負荷が様々な部位にかかってしまいます。その結果、関節や靭帯などを怪我してしまうことも少なくありません。

そこで注目を集めているのがPRP療法。特に海外では10年以上の実績があり、多くのスポーツ選手が治療方法に採用しています。治るのに時間がかかる場所でも、回復力を高める効果が期待できるため、早期復帰が見込めます。このほか、手術が必要だとされる場合も、自己回復力を高めることで回避することもできるかもしれません。

治療後に療養期間を取らなくてもいいので、「治療期間を空けられない」「競技を続けながら対処したい」という人もPRP療法を試してみる選手も少なくありません。

>>PRP療法って何?自分の血液から作る再生医療の選択肢

┃4.PRP療法のメリットと注意点

PRP療法にはさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。リスクも押さえた上で、適した治療法を検討しましょう。

<PRP療法のメリット>

  • 自分の血液からPRPを抽出するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが
  • 手術や入院が不要なので、外来で行うことができる
  • さまざまな疾患に対して効果が期待できる
  • 治療に年齢などの制限がない

<注意点・リスク・限界>

  • 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果の程度や期間には個人差があります
  • 自由診療のため保険が適応されません
  • 新しい治療法なので、長期服用した場合の体への影響が確認されていません

┃5.当院のPRP療法の流れと費用

<当院のPRP療法の流れ>

当院では、以下のような流れでPRP療法を行います。

【診察・カウンセリング】
診察や検査で膝の状態を確認し、PRP療法が適しているか判断します。

【採血・PRPの精製】
患者さんの血液を採取し、遠心分離機を用いて血小板を濃縮したPRPを精製します。

【PRPの注射】
患部にPRPを注射します。採血から注射まで30分程度で終わり、その日のうちにご帰宅いただけます。

<費用>

PRP療法は保険適用外(自由診療)です。当院では、以下の費用で腰痛に対するPRP療法を行っています。

【参考】シングル膝(2V):330,000円

┃6.PRPと併用したい「幹細胞治療」

再生医療はPRPだけではありません。当院では患者様ご自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養し、幹部に注射することで組織の回復を図るASC治療という幹細胞治療を行っております。脂肪由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cell)を用いた再生医療の一種で、発がん性のリスクが少ないことやご自身から接種したものなので副作用が少なく体への負担も少ないのが特徴です。

>>「幹細胞治療」について詳しく知る

┃7.まとめ

PRP療法は、自分自身の血液から抽出した成分を利用して組織の修復を助ける再生医療の一つです。スポーツ障害だけでなく、腰痛や膝など関節痛など、さまざまな疾患に効果が期待できます。手術を避けたい方や、一般的な治療で十分に症状が改善しない方は、お気軽にご相談ください。

再生医療

┃YouTubeでも医療知識を紹介しています

今回の内容はYouTubeでも田中院長がお話ししています。そのほかにも様々ありますので、ぜひご覧ください。



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