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2025.11.21

パリ五輪代表の柔道家、斉藤立選手を襲った「頸椎ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」とは?

パリ五輪の男子柔道100kg超級で日本代表として戦った斉藤立選手。パリ五輪後に頸椎ヘルニアと脊柱管狭窄症だったということを発表し、2024年10月下旬に手術を行いました。現在はリハビリを経て競技に復帰し、2025年11月に行われた講道館杯全日本柔道体重別選手権大会では優勝を果たしました。ここでは、斎藤選手を襲った頸椎ヘルニアと脊柱管狭窄症について解説します。

<コラム監修者>

田中聡院長

田中聡(たなか さとし)

表参道総合医療クリニック院長


大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。

┃1.頸椎ヘルニアとは

頸椎とは、首の骨のことで7つの骨から形成されており、椎間板というクッションの役割を持つ組織を挟んで連なっています。頸椎ヘルニアとは、その椎間板に何かしらが原因で亀裂が入ってしまい、椎間板の中心にある髄核というゼリー状の柔らかい組織が飛び出してしまい、周囲の神経を圧迫してしまう病気です。

頸椎ヘルニアによって、背骨の中にある神経の通り道「脊柱管」が圧迫されることで、脊柱管狭窄症を発症します。すると、神経圧迫によって首、肩、腕、手などに痺れが出るほか、手や指が動かしにくくなったり、歩行が不安定になったりします。

斎藤選手は、2024年3月下旬、右手の指先が痺れを感じはじめ、5月になると手に力が入りにくくなったといいます。さらに同月、海外遠征中に背中に激痛が走るように。その後、痛み止めを服用しながら調整を進め、パリ五輪では5位となりました。帰国後、休養を挟んだものの痛みや痺れは悪化し続けたため、精密検査を受けると、頸椎ヘルニアと、それが原因で脊柱管狭窄症を発症していることが発覚しました。

┃2.頸椎ヘルニアの原因

頸椎ヘルニアの原因は、まだ明確に証明されていません。首に負荷がかかることで症状が出ることもありますが、その前後でMRI検査をしていることは、ほぼほぼなく、実際に証明が難しいとされています。ただし、発症の契機となる事柄はいくつかあります。ここでは頸椎ヘルニアを発症する主な原因について紹介します。

<加齢による椎間板の変性>

年齢とともに椎間板内の水分量が減少し、弾力性が失われてしまい亀裂が入ってしまいます。それが原因となり、ヘルニアを引き起こします。

<姿勢の悪化>

デスクワークやスマートフォン操作でうつむき姿勢になると、首に負荷がかかってしまいます。また、睡眠時のうつ伏せ寝、手枕、枕が合わないといったことで首の椎間板に負担をかけてしまっている場合もあります。

<首への外傷>

格闘技やラグビーなどのスポーツや、交通事故などで首に強い衝撃がかかってしまうことで、ヘルニアになる可能性があります。

<遺伝>

遺伝的な要因が関与しているという報告も、近年増えてきています。

<ストレス>

精神的な負担も発症に関わっているという指摘があります。

┃3.頸椎ヘルニアの治療方法

頸椎ヘルニアの治療方法はいくつかあります。斎藤選手も、発覚時はかなり危険な状態で、医師からは「手術をしなければ引退しかない」と言われ、手術を行いました。斎藤選手の具体的な治療方法については公表されていませんが、ヘルニアの術式は様々あります。

ここでは当院が行っているヘルニアの日帰り手術を紹介します。

<PLDD法(経皮的レーザー椎間板減圧術)>

PLDD

レーザーを椎間板内の髄核に照射して縮小させ、神経の圧迫を軽減する治療法です。1ヶ所あたり15〜30分程度と短時間で完了し、日帰りが可能。1mm程度の穴から治療できるため、術後の出血や痛みも抑えられます。

【主な対象疾患】
椎間板ヘルニア、坐骨神経痛など

【費用】
初回1ヶ所 825,000円(税込)
2ヶ所目以降(椎間加算) 275,000円(税込)

【副作用・リスク】
今まではなかった腰痛、しびれ、筋肉の張り、感染など

>>PLDD法の詳細はこちら

<PEL法(脊柱管狭窄症内視鏡下手術)>

PEL(脊柱管狭窄症内視鏡下手術)

7〜8mmの小さな切開で行う手術です。局所麻酔で神経の圧迫を取り除けるため、日帰りが可能。早期に社会復帰したい方や、持病や年齢により全身麻酔下の手術が受けられない方にとって、特に利点の大きい手術です。

【主な対象疾患】
椎間板ヘルニア、坐骨神経痛など

【費用】
1ヶ所 1,540,000円(税込)

【副作用・リスク】
術後血腫、感染、神経損傷など

>>PEL法の詳細はこちら

<SAST法(脊椎幹細胞移植術)>

SAST(脊椎幹細胞移植)

患者さんの脂肪から幹細胞を取り出して培養し、椎間板や腰椎などに移植する治療法です。幹細胞には傷ついた組織を再生する働きがあるため、症状の改善が見込めます。

【主な対象疾患】
椎間板ヘルニア、椎間板変性症、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症など

【費用】
1回165万円

【副作用・リスク】
注射部位の一時的な腫れや痛み、感染など

>>SAST法の詳細はこちら

┃4.まとめ

斎藤選手は、2024年10月下旬に手術を受け、同年の11月上旬には退院。実戦に復帰したのは、2025年9月に行われた全日本実業柔道個人選手権大会でした。

当院では、患者さんの状況などをお伺いした上で、様々な治療法から生活スタイルにあった治療計画を行います。もしも気になることがありましたらお気軽にご相談ください。

手足のしびれ外来

┃YouTubeでも医療知識を紹介しています

今回の内容はYouTubeでも田中院長がお話ししています。そのほかにも様々ありますので、ぜひご覧ください。



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