
APS療法は、患者さんから採取した血液から血小板を抽出・濃縮したPRPに、さらに特殊な加工を施したものを、患部に注射して修復を促す再生医療です。今回は、「次世代PRP」とも呼ばれるAPSについて紹介します。
<コラム監修者>

田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.APS療法とは
血小板にはさまざまな効果をもたらす細胞で、周りの細胞に働きかけて組織の修復を促す働きを持っています。この作用を利用したのが、患者さん自身の血液を使って行う「PRP療法」です。PRP(多血小板血漿)は、採血を行った後、採取した血液から血小板を抽出・濃縮したもの。これを患部に注射して、損傷している組織の修復を促します。
また炎症を抑える作用も期待できるため、痛みを軽減する効果も見込めます。現在、これまで修復不可能だとされていた、神経損傷、軟骨、椎間板などの部位にも作用するとして、様々な場面で使用されています。
そのPRPに、さらに特殊な加工を加えたのがAPS療法です。APS(=Autologous Protein Solution:自己たんぱく質溶液)は、従来のPRPを、さらに遠心分離や特殊加工することで、抗炎症作用のあるタンパク質や成長因子をより高濃度に抽出したもの。「次世代PRP」とも呼ばれています。
┃2.APS療法に効果的な疾患は?
APSは特に関節症治療に有効だとされています。
従来の関節症治療は、軽症の場合リハビリテーションや痛み止め薬や湿布約を使った保存療法から治療をはじめます。進行が進むと関節内へのヒアルロン酸注射を、さらに重症化すると人工関節などの手術療法が行われます。
APS療法やPRP治療は、ヒアルロン酸を注射では効果が不十分だけど、手術をすることには抵抗がある場合に用いられる再生医療です。効果には個人差がありますが、痛みの緩和や炎症の抑制のほか、軟骨破壊の抑制などが期待できます。
再生医療を試す際、まずはPRP療法で経過を見ることをおすすめしています。
┃3.PRP療法・APS療法のメリットと注意点
PRP療法・APS療法にはさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。リスクも押さえた上で、適した治療法を検討しましょう。
<PRP療法・APS療法のメリット>
- 自分の血液から抽出したPRPを使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが低い
- 手術や入院が不要なので、外来で行うことができる
- さまざまな疾患に対して効果が期待できる
- 治療に年齢などの制限がない
<注意点・リスク・限界>
- 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果の程度や期間には個人差がある
- 自由診療のため保険が適応されない
- 新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていない
┃4.当院のPRP療法の流れと費用
当院では、患者さんお一人おひとりの状態や生活スタイルに合わせ、適切な治療法をご提案します。ここでは、当院のPRP療法の流れと費用を紹介します。
<当院のPRP療法を使った治療の流れ>
当院では、以下のような流れでAPS療法を行います。
【診察・カウンセリング】
診察や検査で膝の状態を確認し、APSを使った治療が適しているか判断します。
【採血】
患者さん自身の血液を約55ml採取します。
【PRPの抽出】
専用のキットと遠心分離機を用いて、PRPを抽出します。
【PRPの投与】
抽出したPRPを患部の関節内に注入します。
<費用>
PRP療法は保険適用外(自由診療)です。当院では、以下の費用で腰痛に対するPRP療法を行っています。
【参考】シングル膝(2V):330,000円
┃5.まとめ
PRP療法・APS療法は、自分自身の血液から抽出した成分を利用して組織の修復を助ける再生医療の一つです。興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。
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