
3ヶ月以上続く腰痛は「慢性腰痛」と呼ばれ、ぎっくり腰のような急性腰痛よりも治りにくい傾向があります。なかなかよくならない痛みや、繰り返す腰痛に悩む方も珍しくありません。
そこで今回は、腰痛の種類や原因、長引く腰痛への効果が見込める新しい治療選択肢「PRP療法」について解説します。
<コラム監修者>
田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.腰痛の種類と原因
腰痛と一口に言っても、その原因はさまざまです。筋・筋膜性の腰痛と脊椎疾患による腰痛に分けて、痛みが出る原因を解説します。
<腰痛の大部分は筋・筋膜性のもの>
慢性腰痛の多くは、腰の筋肉や筋膜が緊張して血流が滞ることで生じる「筋・筋膜性腰痛」です。
長時間にわたって同じ姿勢を続けたり悪い姿勢を取ったりする生活習慣や、筋肉の使いすぎなどによって腰に負担がかかり、筋肉の緊張が強くなります。小さな負担でも、積み重なると痛みが慢性化し、長引く腰痛や再発を繰り返す腰痛につながるリスクがあるのです。
<なかなか治らない腰痛は脊椎疾患の可能性も>
脊椎(背骨)の異常が原因で腰痛が生じるケースもあります。
骨や靭帯、椎間板などの変形や損傷で、背骨を通る神経が圧迫されると痛みが出現。腰痛だけでなく、お尻や足の痛み、しびれを伴うこともあり、進行すると排尿・排便障害、下肢の脱力感などの神経症状が現れるケースもあります。
- 脊柱管狭窄症:神経の通り道(脊柱管)が狭くなる
- 椎間板ヘルニア:背骨の骨と骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫する
- 腰椎すべり症:背骨の一部が前方にずれて脊柱管を狭める
- 腰椎分離症:背骨が疲労骨折を起こし、分離して不安定になる
【腰痛を引き起こす脊椎疾患の例】
これらの疾患は放置すると重症化するリスクがあるため、強い腰痛や慢性的な腰痛がある場合は検査を受けてみましょう。
┃2.長引く腰痛はPRP療法で改善できる可能性も
腰痛の一般的な治療法は、筋肉をほぐす運動や全身運動、姿勢の改善など。痛みが強ければ、内服薬や湿布、神経ブロック注射を使用する場合もあります。
このような治療を続けても改善しない場合、PRP療法を検討してみるのもよいでしょう。
<PRP療法とは>
PRP療法は、患者さん自身の血液を採取し、遠心分離によって血小板を濃縮した「多血小板血漿(PRP)」を患部に注射する治療法です。血小板には、傷口に集まって出血を止め、周囲の細胞を呼び寄せて修復を促す働きがあります。この性質を利用して損傷した組織の回復を助けるため、慢性的な痛みの改善が期待できるのです。
- 患者さん自身の血液を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクを抑えられる
- 損傷した組織を修復し、腰痛を根本から改善できる可能性がある
- 採血から注射まで30分程度で受けられる
- 受けられる年齢の上限がなく、幅広い世代に適応できる
【PRP療法のメリット】
- まれに感染が起こる場合がある
- 注射後に一時的に痛みが出る場合がある
- 効果が現れるまでの期間や効果の程度に個人差がある
- 保険が適用されず、自由診療となる
【PRP療法のデメリット】
PRP療法について詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
┃3.脊椎疾患が原因の腰痛には日帰り手術の選択肢も
筋・筋膜性腰痛だけでなく脊椎疾患にもPRP療法の効果は期待できます。ただし、重症度によっては手術を行ったほうが症状の改善につながる場合も。
当院では体への負担を抑えられる腰痛日帰り手術を行っており、PRP療法と組み合わせてより早期の回復を目指すことも可能です。一般的な脊椎手術では入院が必要ですが、当院では内視鏡を使用し、局所麻酔下で日帰り手術を行っています。
当院で対応している日帰り手術には、以下のような種類があります。検査結果や患者さんのご要望に応じて治療法をご提案しますので、まずはご相談ください。
<PEL(脊柱管狭窄症内視鏡下手術)>
低侵襲手術であるPEL(脊柱管狭窄症内視鏡下手術)は7〜8mmの小さな切開で済み、日帰り手術が可能です。大きな切開を伴う除圧術や固定術では全身麻酔が必要ですが、内視鏡下で行うPELは局所麻酔で神経の圧迫を取り除けます。早期に社会復帰したい方や、持病や年齢により全身麻酔下の手術が受けられない方にとって、特に利点の大きい手術です。
- 脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症
- 腰椎分離症
【主な対象疾患】
<経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)>
レーザーを椎間板内の髄核に照射して縮小させ、神経の圧迫を軽減する治療法です。施術に要する時間は一箇所あたり15〜30分程度と短時間なので、日帰りが可能。1mm程度の穴から治療できるため、術後の出血や痛みが抑えられることも特徴です。
- 椎間板ヘルニア
【主な対象疾患】
<経皮的内視鏡下椎間板摘出術(PED)>
内視鏡を使用して椎間板を摘出する手術です。切開幅は約7mmと、細い内視鏡を使って手術を行うため患者さんの身体への負担を抑えられるのが特徴。レーザー治療では対応が難しい重症例にも効果が期待できます。手術時間は1〜2時間程度で、日帰りが可能です。
- 椎間板ヘルニア
【主な対象疾患】
<ディスクフロー治療>
傷を塞ぐ接着剤のような役割を持つ「フィブリン」という物質を患者さんの血液から生成し、椎間板の亀裂を封鎖する治療です。ご自身の血液からつくる自己フィブリンなので、アレルギーや拒絶反応、感染などのリスクを抑えられます。
- 椎間板ヘルニア
【主な対象疾患】
┃4.まとめ
腰痛の原因は多岐にわたります。従来の治療で改善が難しい場合には、PRP療法や日帰り手術の選択肢も。当院では、再生医療と日帰り手術を組み合わせ、お一人おひとりに合った治療法をご提案いたします。「腰痛がなかなかよくならない」とお悩みなら、ぜひご相談ください。
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