年齢を重ねると、どうしても気になってしまう「薄毛」。男性ホルモンの影響によって起こるこの症状は、進行性のある脱毛症で、男性の場合は「AGA」、女性の場合は「FAGA」が原因と呼ばれます。今回は脱毛症のメカニズムと、内服薬による治療方法についてご紹介します。
<コラム監修者>
田中聡(たなか さとし)
表参道総合医療クリニック院長
大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。開院後、多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。
┃1.薄毛が起こる原因とは
薄毛は不要な生理現象ではなく、性別や年齢を超えて、よくある疾患です。主な原因として、ホルモンの影響で毛周期が乱れる「AGA/FAGA」のほかに、遺伝子的な要因、加齢、ストレスなどが挙げられます。
特に影響が大きいとされているのがAGAもしくはFAGAだと言われています。ここではAGAとFAGAについて説明します。
<AGAとは>
AGA(男性型脱毛症)とは「Androgenetic Alopecia」の略称で、男性ホルモンの影響によって薄毛が進行する脱毛症です。思春期以降におでこの生え際や頭頂部の髪が、どちらか一方、または双方から薄くなっていく症状で、早い人は10代で発症します。
【AGAの原因】
- 男性ホルモン:男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、「5αリダクターゼ」という酵素によって「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されることで髪の毛が軟毛化します。ヘアサイクルの成長期を短くする原因物質と考えられており、髪の毛が長く太く成長する前に抜けてしまうという現象が起こります
- 遺伝:髪の毛の軟毛化を進める「5αリダクターゼ」の活性度が遺伝的に高い場合があります
- 生活習慣の乱れ:食生活の乱れや運動不足、睡眠不足は、頭皮環境の乱れを起こすほか、頭皮の血行不良を引き起こすなど、育毛に悪影響を及ぼす可能性があります
- ストレス:ホルモンバランスの乱れや、自律神経が乱れが起こり、毛周期に悪影響を及ぼします
- 肌荒れ:毛髪のカラーリングやパーマ剤、整髪料などによる頭皮ダメージが、頭皮環境を乱し、髪の毛を細くしてしまっている可能性があります
<FAGAとは>
FAGA(女性男性型脱毛症)とは「Female Androgenetic Alopecia」の略称で、女性に起こる脱毛や薄毛の総称です。発症時期は思春期以降で、特に閉経後の40代~50代に多く見られます。細い髪が増え、全体のボリュームが少なくなるのが特徴です。主な初期症状としては、分け目が広がったように感じたり、抜け毛が増えたりします。症状が進むと髪のボリュームが落ちてしまい、全体的に髪の毛が薄くなったように感じてしまいます。さらに進行すると糖両部から脱毛し、徐々に範囲が広がっていきます。
【FAGAの原因】
- 女性ホルモンの現象:加齢や出産などで、女性ホルモンのバランスが乱れ、ヘアサイクルに影響を及ぼします
- 過度なダイエット:無理な食事制限を続けると、髪の成長に必要な栄養素が不足し、薄毛を悪化させることがあります
- 遺伝:髪の毛の軟毛化を進める「5αリダクターゼ」の活性度が遺伝的に高い場合があります
- ストレス:ストレスが溜まることで自律神経が乱れて、毛周期に悪影響を及ぼします
- 生活習慣の乱れ:食生活の乱れや運動不足、睡眠不足は、頭皮環境の乱れを起こすほか、頭皮の血行不良を引き起こすなど、育毛に悪影響を及ぼす可能性があります
- 肌荒れ:髪の毛のカラーリングやパーマ剤、整髪料などによる頭皮ダメージが原因で、毛周期に影響が出ることがあります
┃2.AGA/FAGAの治療方法
薄毛の治療方法にはいくつかあります。患者の全身状態や、ライフスタイルに応じて治療計画を立てます。ここでは内服薬についてご紹介します。
薄毛の治療方法にはいくつかあります。患者の全身状態や、ライフスタイルに応じて治療計画を立てます。ここでは内服薬についてご紹介します。
>>自分の修復力で育毛するPRP療法についてはこちら
<フィナステリド(男性用)>
薄毛や抜け毛の進行を止める作用がある薬です。主にⅡ型5αリダクターゼを阻害する効果を持ち、効果を実感するためには、数か月間の内服が必要。半年以上服用すると、有効率は約80%と言われています。またミノキシジルと併用治療が可能です。
なお、フィナステリド服用中は献血を行うことができません。服用をやめて最低1か月は休薬が必要です。
【副作用とリスク】
- 勃起不全
- 性欲の減退
- 精液量の減少
- 肝機能障害
費用:フィナステリド1㎎(28日分)7,700円
※保険適応外です
※税込価格です
<デュタステリド(男性用)>
フィナステリドと同様、薄毛や抜け毛の進行を止める作用を持ちます。フィナステリドは主にⅡ型5αリダクターゼを阻害するのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方の5αリダクターゼを阻害します。また半減期が長く、効果の持続時間も長いとされています。ミノキシジルと併用治療も可能です。
なお、デュタステリドが女性や妊娠中の胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるため、服用中および服用中止後6か月以内は献血をすることができません。
【副作用とリスク】
- 性欲減退
- 男性機能の低下
- 初期脱毛
- 乳房障害(圧痛・肥大)
- うつ症状・気分の落ち込み
- 蕁麻疹
費用:デュタステリド0.5㎎(28日分)9,900円
※保険適応外です
※税込価格です
<ミノキシジル(男性用・女性用)>
頭皮の血行促進と髪の毛を作る毛母細胞の活性化といった発毛効果を全身に作用させます。また、全身の育毛が認められるため、毛髪以外の体毛や産毛も濃くなることがあります。
【副作用とリスク】
- 血圧低下や心拍数の増加、胸痛
- 頭痛やめまい、眠気、倦怠感
- 吐き気や嘔吐などの消化器症状
- 急激な体重増加、手足のむくみ
- 皮脂の過剰分泌
費用:ミノキシジル2.5㎎(100日分)33,000円
※保険適応外です
※税込価格です
<パントガール(女性用)>
パントガールはドイツの製薬会社により開発された内服薬で、世界で初めて女性の薄毛に効果が認められた薄毛治療薬です。この治療薬は主にパントテン酸カルシウムやケラチン、シスチンといった栄養素を含有します。頭皮に栄養を行き渡らせ、頭皮環境を整えることで薄毛の改善を目指します。
パントガールは、アミノ酸、ビタミン、タンパク質などの栄養素を主成分としたサプリメントに近い薬なので、重篤な副作用は報告されていません。しかし、軽度な症状は報告されているので何かあれば医師に相談しましょう。
【副作用とリスク】
- 腹痛
- 下痢
- めまい
- 頭痛
- 動悸
- 胸やけ
費用:パントガール 1箱(1ヶ月分)16,500円
※保険適応外です
※税込価格です
┃3.まとめ
薄毛は加齢などに伴い、多くの人が抱える悩みです。早くから治療に取り組むことで、進行を遅らせたり、薄毛を改善できる可能性はより高くなります。もしも気になることがあればお気軽にご相談ください。
【関連記事】
・Efficacy and safety of mesenchymal stem cell therapies for ischemic stroke: a systematic review and meta-analysis.
Stem Cells Transl Med. 2024;13:886–897.
https://doi.org/10.1093/stcltm/szae040
・A review and meta‑analysis of stem cell therapies in stroke patients: effectiveness and safety evaluation.
Neurol Sci. 2024;45:65–74.
https://doi.org/10.1007/s10072-023-07032-z