院長ブログ

  • HOME > 
  • 院長ブログ > 
  • 脳梗塞後のリハビリに限界を感じたら?専門…
2025.04.30

脳梗塞後のリハビリに限界を感じたら?専門医が教える再生医療の実力

脳梗塞を発症し、懸命にリハビリに取り組んでいる中で、ふとこんな言葉を言われたことはありませんか?「機能回復のピークは過ぎていますね」「これ以上の改善は難しいでしょう」こうした言葉に、落胆とともに諦めの気持ちが込み上げてくる方も多いのではないでしょうか。しかし、今その常識が変わりつつあります。「再生医療」という新しい治療法が、回復の扉を開き始めているのです。

<コラム監修者>

田中聡院長

田中聡(たなか さとし)

表参道総合医療クリニック院長


大阪医科大学医学部卒業。救急車搬送が日本で一番多い「湘南鎌倉総合病院」や「NTT東日本関東病院」にて脳神経外科医として脊椎・脊髄疾患、脳疾患、がん患者の治療に従事。その後、稲波脊椎関節病院で脊椎内視鏡、森山記念病院で脳・下垂体の内視鏡の経験。様々な患者様を診療するようになりました。しかし、脳出血や脳梗塞の方は、手術をしても脳機能自体は回復しないため、麻痺は改善しません。また腰痛が改善しなかったり、手術後も痛みやしびれが残る後遺症に悩まされている患者様を見てきて、「現代の医療では解決できない問題を治療したい」と表参道総合医療クリニックを開院しました。日本脳神経外科学会認定 日本脳神経外科専門医として、現在は多数の腰痛日帰り手術や、再生医療などを行い、多方面から高い評価をいただいています。

┃1.脳梗塞と後遺症、リハビリだけでは限界がある理由

脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまうことで、周囲の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳の細胞が死んでしまう病気です。多くは動脈硬化や心房細動などが原因で起こり、日本人の死因の上位を占めています。前兆なく、突然起こることがほとんどで、半身の痺れ、言葉が出てこない、ろれつが回らないなどの症状が現れます。

>>動脈硬化について

脳梗塞が起こると、詰まった血管の周辺にある脳の神経細胞はダメージを受けて、壊死してしまいます。脳の神経細胞は「中枢神経」といって全身からの情報を受け、各部位に指令を出す組織。中枢神経は、自然に再生することは難しいとされています。そのため、ダメージを負った箇所が担っていた組織機能は停止してしまい、結果、後遺症として体に現れます。

<主な後遺症>

症状 詳細
半身麻痺 手足の痺れや、動かしづらさを覚えます
吃音障害/失語症 話す、聞く、読む、書くことが困難になります
嚥下障害 飲み込む力が低下し、のどや胸につかえている感覚を覚えることがあります
感覚障害 触覚や痛覚が鈍くなったり過敏になったりする場合があります。発症して半年後ごろからしびれが強くなる場合もあります
高次脳機能障害 記憶力、集中力、認知機能が低下します
抒情失禁 感情のコントロールがきかなくなります

>>脳梗塞の後遺症について

┃2.脳梗塞の後遺症の根本治療に挑む脳外科医

脳梗塞によって後遺症が残ってしまう根本的な原因は、脳の神経細胞が壊死してしまい、回復できないから。そのため、これまで脳梗塞などをはじめとした脳の病気のプロフェッショナルでもある脳外科医たちは、脳梗塞に対して発症からできるだけ早く対処し、脳細胞が壊死する箇所を最小限に留めることで、後遺症を軽度に留める努力をしてきました。

脳梗塞から回復した後に行うリハビリも、本質的には壊れていない神経を使って別のルートを作り、動作や言語機能を補うという考え方で行われます。そのため、脳外科医は「どうやって後遺症が残ってしまうのかわかっているのに、その根本治療ができない」というジレンマに陥ってしまっていました。

しかし近年、神経細胞を修復できる可能性がある再生医療が確立し、これまで難しいとされてきた脳神経細胞の修復が期待されるようになっています。

そこで日本脳神経外科学会認定 日本脳神経外科専門医の資格を持つ当院の田中聡はクリニックを開業。再生治療を使った脳梗塞の後遺症治療を提供しています。

┃3.再生医療とは?──壊れた神経そのものを修復するというアプローチ

再生医療とは、身体が本来持つ「治す力」を活用して、損傷した組織や機能を回復させる医療です。当院では幹細胞を使った再生医療に取り組んでいます。

<幹細胞治療とは>

幹細胞は身体の修復や再生が必要なときに自ら細胞分裂を行い、傷ついたり不足した細胞の代わりとなる未分化の細胞です。体の修復能力を持つので、これまで難しかったとされる症状も治すことができると注目を集めています。

幹細胞は分裂して同じ細胞を作る能力を持った「組織幹細胞」と「多能性幹細胞」の2種類に分けられます。組織幹細胞の中でも間葉系幹細胞は骨髄や脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などの組織に存在する体性幹細胞の一種で、さまざまな細胞へ分化することができます。再生が困難とされていた神経や血管、免疫系にも作用すると言われており、損傷した脳神経の回復促進にも作用することがわかってきました。

当院の幹細胞治療では、患者自身の体から採取した脂肪細胞をもとに幹細胞を培養。それを静脈投与、脊髄腔内投与で患部に注入し、神経細胞の修復を試みます。

【脳卒中の後遺症に期待される効果】

  • 炎症を抑える
  • 損傷した神経の修復を助ける
  • 神経ネットワークの再構築を促す など

>>幹細胞治療について

┃4.実際に効果はあるの? 脳外科医が語る臨床データ

再生医療は新しい分野ではありますが、脳梗塞に対する幹細胞治療の有効性について世界的に研究が進められています。

  • 2024年に発表されたメタアナリシスでは、日常生活機能(mRS・NIHSS)が有意に改善したと報告​
  • 別の臨床試験では、Barthel Index(ADLスコア)が6か月で平均10ポイント向上したという結果も​

これらのデータは、「リハビリでは限界があった後遺症」にも、神経再生の可能性があることを示しています。

┃5.表参道総合医療クリニックで行う後遺症の再生医療とは

表参道総合医療クリニックでは、日本脳神経外科学会認定 日本脳神経外科専門医の資格を持つ医師が後遺症治療に再生医療を用いた治療を提供しています。

>>再生医療について

<特長①脳神経外科医による的確な診断と戦略設計>

院長の田中聡は、日本脳神経外科学会認定の日本脳神経外科専門医を取得した医師です。MRIや脳波、神経所見を元に、患者ごとに適切な投与部位やタイミングを設計します。

<特長②こだわった幹細胞の質と投与方法>

当院では自己脂肪由来の間葉系幹細胞(ASC)は患者自身から採取したものから幹細胞を培養します。そのため副作用をより少なく留めることができます。また投与する際も、患部にできるだけ直接届けるために、点滴や局所投与だけでなく、髄腔内に直接投与する方法などにも対応しています。

<特長③厚労省認可の再生医療等提供機関>

当院は「第二種再生医療等技術」に基づき、幹細胞治療を正式に届け出済みの医療機関です。安全管理も徹底しています。

>>再生医療を提供する病院選びのポイント

┃6.表参道総合医療クリニックの幹細胞治療の流れ

当院では、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を取り出し、培養したうえで投与する治療を行っています。幹細胞治療を行う際には、主に下記のような流れで治療を進めていきます。

<①カウンセリング>

事前に服薬情報やMRI画像などをご用意していただいた上で、医師がカウンセリングを行います。体調や既往歴、服薬中の薬、リハビリ状況などを伺います。

<②検査>

感染症の有無を調べるための血液検査や、胸部のレントゲン検査、心電図検査などを行います。

<③脂肪採取・血液採取>

腹部からごく少量の脂肪を採取します。入院などは不要な場合がほとんどです。

<④幹細胞の培養・PRPの抽出>

幹細胞を使った治療の場合、脂肪細胞から幹細胞を分離、培養します。培養には約3週間を要します。PRP療法の場合、採血を行い、その後遠心分離機にかけて、PRP(多血小板結晶)を抽出します。

<⑤幹細胞・PRPの神経根局所投与、髄腔内投与>

培養した幹細胞や、抽出したPRPを脊髄の枝である神経根に局所投与もしくは髄腔内に投与します。

<⑥経過観察>

治療後の効果について定期的に経過観察を行います。治療効果を確認しながら、リハビリを併用します。

┃7.治療費について

再生医療は保険適用外の自由診療となります。費用の一例は以下の通りです(すべて税込)。

項目 価格
医師による診察・カウンセリング 11,000円
感染症検査(採血) 11,000円
PRP神経修復治療 1か所55万円
幹細胞培養上清神経修復治療 1か所44万円
幹細胞培養上清髄腔内投与 1回 55万円
脂肪由来幹細胞点滴投与 1回165万円
脂肪由来幹細胞髄腔内投与 1回198万円

┃8.再生医療のメリットとデメリット

幹細胞治療はさまざまなメリットがある一方、新しい治療であるためリスクも存在します。

<メリット>

  • 患者自身の細胞を使っているので安全性が高く、副作用が少ないです
  • 今までは対応が難しかった症例も根本的に治療ができる可能性があります
  • 入院の必要がなく、外来で治療をすることができます

<デメリット>

  • 自由診療のため保険が適応されません
  • 新しい治療法のため、長期での体への影響が確認されていません
  • 患者自身の再生力を利用した治療法なので、効果が現れるまでに個人差があります

┃9.まとめ

再生医療は、魔法のような治療ではありません。しかし、「これ以上は回復が望めない」と言われた方々にとっては、回復の可能性がある治療方法かもしれません。もしも気になった方はお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

再生医療

【参考資料・論文】

・Hess DC, Wechsler LR, Clark WM, et al. (2017)
“Safety and efficacy of multipotent adult progenitor cells in acute ischemic stroke (MASTERS): a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial.”

To Top
ご予約・お問合せ 24時間受付WEB予約 日帰り手術・がん治療のご相談