乳がんのステージ4とは。症状や治療法について詳しく解説
乳がんのステージは0〜4に分かれています。今回は、ステージ4の症状や治療法などについて詳しく解説します。
乳房以外の部位にがんが転移しているステージ4は、手術は行わず薬物療法が基本となります。がんが最も進んだ状態ではありますが、だからといって末期がんというわけではありません。
完治させることは難しくても、適切な治療によってがんの広がりを抑え、症状を緩和していくことは可能です。
乳がんは生存率の高いがんですから、ステージ4でも長生きしている人はたくさんいます。そして何より、諦めずに前向きな気持ちで治療をしていくことが大切です。緩和ケアも取り入れながら、強い気持ちを持って治療を進めていきましょう。
乳がんのステージ分類は0〜4の5段階
がんのステージには0期からⅣ期まであり、そのステージに合わせて治療が選択されます。Ⅳ期が最も進んだ状態です。
乳がんのステージごとの特徴と生存率について、一覧表にまとめました。
乳がんは早期に発見できれば治療のしやすい病気であり、生存率も高いです。しかしステージ4になると生存率はおよそ40%まで落ち込んでしまいます。(全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査KapWebより)
ステージ | T:しこりの大きさ | N:リンパ節への転移状況 | M:他臓器への転移 | 5年生存率 |
---|---|---|---|---|
0期 (非浸潤がん) |
しこりは感じられない | なし | なし | 100% |
Ⅰ期 | 2cm以下 | なし | なし | |
Ⅱ期 | ||||
ⅡA期 | ①2~5cm以下 ②2cm以下 |
①転移なし ②脇の下のリンパ節への転移あり |
なし | 96% |
ⅡB期 | ①5cmを超える ②2~5cm以下 |
①転移なし ②脇の下のリンパ節への転移あり |
なし | |
Ⅲ期 | ||||
ⅢA期 | ①5cmを超える ②しこりの大きさは問わない |
①脇の下のリンパ節または胸骨の内側のリンパ節への転移あり ②脇の下のリンパ節への転移の固定、または胸骨の内側のリンパ節のみへの転移あり |
なし | 80.8% |
ⅢB期 | 大きさは問わないが、 ・しこりが胸壁に固定されている ・皮膚にむくみや潰瘍などができている (しこりのない炎症性乳がんを含む) |
転移なし、または脇の下のリンパ節への転移あり、または胸骨の内側のリンパ節への転移あり | なし | |
ⅢC期 | 大きさは問わない | ・脇の下のリンパ節または鎖骨リンパ節への転移あり ・または脇の下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節、両方への転移あり |
なし | |
Ⅳ期 | 大きさは問わない | 転移の有無は問わない | あり | 37.1% |
乳がんのステージ4の特徴は他臓器への転移
では、ステージ4の乳がんはどのような特徴があるのか、判断の基準を詳しくみてみましょう。
他のステージとの最も大きな違いは、他臓器への移転があるかどうかです。しこりの大きさやリンパ節への転移状況は問わないので、たとえしこりが小さくても、他臓器への転移がみられればステージ4となります。
- 骨
- 肺
- 肝臓
- 脳
などに転移しやすく、最初は骨に転移するケースが多くみられます。
他臓器に転移してしまっていると、もう末期がんなのではないか、治療のしようがないのではないかと不安になってしまうと思いますが、決してそうではありません。
厚生労働省では、末期がんについて以下のように定義しています。
「末期」の定義については、「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」とすることが適当である。
引用元:厚生労働省:平成18年全国厚生労働関係部局長会議資料(老健局)
つまり、がんが進行して治療のしようがない、これ以上治療をしても治癒の見込みがないと判断された状態が末期がんです。
乳がんのステージ4は、完治は難しくてもがんを小さくしたり、減らしたりといった治療は可能です。ですので、必ずしも乳がんのステージ4=末期がんではありません。
乳がんのステージ4の症状
乳がんは初期にはあまり自覚症状がありませんが、ステージ4になるとさまざまな症状が出てきます。
がんが転移した場所での痛み
乳がんのステージ4はしこりの大きさに関係なく、他臓器への転移があるかどうかで判断しますので、乳房のしこりがまだ小さく、本人が気が付かないこともあります。
ただ、他臓器へ転移しているため、乳房以外のところに痛みが出る場合があります。たとえば、
- 背中
- 腰
- 肩
などです。
中には、乳房に痛みを感じる人もいます。がんが進行し、炎症などによって痛みが出やすくなるため、治療と並行して緩和ケアも必要になるでしょう。
骨転移した場合の骨の症状や体調の変化
骨転移した場合、骨がもろくなり、部位によっては日常生活の中で骨折してしまうこともあります。
また、骨から溶け出したカルシウムによって高カルシウム血症になったり、様々な不快な症状が出ることもあります。
- 胃のむかつき
- トイレが近くなる
- お腹の張り
- 便秘がちになる
などです。
脳転移した場合の不快な症状
乳がんが脳に転移すると、腫瘍が大きくなるにつれて脳が圧迫されます。
- 頭痛
- 嘔吐
- まひ
- けいれん
などの症状がみられることがあります。
肺に転移した場合の症状
肺に転移したということは、肺がんと同じ状態ですから、咳が増えたり、ときには血痰がでたりします。
また息苦しさや胸の痛みを感じることもあります。咳が続いているときは特に注意が必要で、いつもと違う咳、長引く咳は早めの受診が肝心です。
がんが進行すると腹水が溜まることがある
これは乳がんに限った症状ではありませんが、がんが進行するとお腹に水が溜まることがあります。これを腹水といいます。
肝臓の働きが弱まり「アルブミン」という物質が少なくなることが原因で、お腹の中に大量の水が溜まってしまいます。
すると内臓が圧迫され、
- 呼吸困難
- 食欲不振
- 胃の痛み
などが起こり、がんの治療に支障をきたすことがあります。
乳がんのステージ4の治療の流れ
乳がんステージ4=末期がんではないことを先ほど説明しました。がんの転移の状態に合わせて治療の方法はいくつもあります。
がんの性質や転移の状態によって治療法を選択しますが、他のステージとは違い、まずは薬物治療から行うのが主流となっています。
場合によっては手術や放射線治療を組み合わせ、病状が進むのを防ぎます。
乳がんのステージ4の薬物療法
乳がんステージ4では、がんのタイプに合わせた薬物療法が行われます。
- ホルモン療法
- 抗がん剤治療
- 抗HER2療法
- 免疫療法
などです。
乳がんの分類には、がんの進行具合を示すステージの他、遺伝子の特徴による分類「サブタイプ」もあります。薬物療法はサブタイプによって選択されるため、その特徴と薬物療法について一覧にまとめました。
サブタイプ | ホルモン受容体 | HER2受容体 | Ki-67(増殖力) | 治療法 |
---|---|---|---|---|
ルミナルAタイプ | 陽性 | 陰性 | 低い | ホルモン療法、化学療法 |
ルミナルBタイプ | 陽性 | 陰性 | 高い | ホルモン療法、化学療法 |
ルミナルHER2タイプ | 陽性 | 陽性 | 低~高値 | ホルモン療法、抗HER2療法、化学療法 |
HER2タイプ | 陰性 | 陽性 | 低~高値 | 抗HER2療法、化学療法 |
トリプルネガティブタイプ | 陰性 | 陰性 | 低~高値 | 化学療法 |
ホルモン療法は女性ホルモンの働きを抑える治療
ホルモン療法は、女性ホルモンが原因となってがんが増殖してしまうタイプの症状に使われる治療法です。
乳がんには、がん細胞の増殖にエストロゲン(女性ホルモン)を必要とするものがあり、乳がん全体の6~7割を占めています。このようなエストロゲンで増殖するタイプの乳がんに対してはエストロゲンの働きを抑える「ホルモン療法(内分泌療法)」の効果が期待できます。
引用元:タモキシフェン(ホルモン)療法 | 国立がん研究センター 中央病院
主に、以下の4つのホルモン剤が使用されます。
治療薬 | 働き | 使用時期 |
---|---|---|
抗エストロゲン薬 | エストロゲンの受容体に結合して作用を阻害する | 閉経前・閉経後どちらも使用 |
LH-RHアゴニスト製剤 | 黄体ホルモン放出ホルモンを抑制する | 閉経前 |
選択的アロマターゼ阻害薬 | アロマターゼという酵素の働きを阻害して女性ホルモンを抑える | 閉経後 |
プロゲステロン製剤(黄体ホルモン剤) | エストロゲン受容体の分解を促す | 閉経前・閉経後どちらも使用 |
閉経前と閉経後では、女性ホルモンのエストロゲンが作られる場所が違うため、使用される薬剤も使い分けられます。
ホルモン療法には、以下のような副作用が見られます。
- のぼせ・ほてり
- 発汗
- 動悸
- 頭痛
- 肩こり
- 気分の落ち込み
- 不眠
一見すると更年期障害のような症状ですが、抗がん剤の治療と比べると副作用は軽いでしょう。
ただし、薬の投与期間が長く、場合によっては3年〜5年かかり、その間は妊娠できないことが大きなデメリットです。
殺細胞性抗がん剤はがん細胞を死滅させる抗がん剤
増殖するがん細胞を死滅または抑制させるための薬が殺細胞生抗がん剤です。
- アルキル化薬
- 白金化合物
- トポイソメラーゼ阻害薬
などが使用されます。
抗がん剤は副作用が強いことが知られていますが、このような症状が見られます。
- 吐き気・嘔吐
- 脱毛
- 貧血
- 出血
- 手足の痺れ
- 倦怠感
- 口内炎
これは、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうためです。
殺細胞生抗がん剤化学療法の中でも最も早く開発された薬剤であり、現在はジェネリック薬も多く開発されています。
分子標的薬は特定の分子を攻撃する抗がん剤
殺細胞生抗がん剤は正常な細胞まで攻撃してしまうために副作用も強いため、体への負担が軽い薬として開発されたのが分子標的薬です。その名の通り、特定の分子だけを標的としています。
- がん細胞の増殖に関わる増殖因子
- 増殖因子の受容体
- 細胞内シグナル伝達物質
など固有の分子に作用します。
従来の抗がん剤と比べると副作用が少なく、患者さんの負担も減らせます。
抗HER2療法はHER2陽性の人に使われる分子標的薬療法
抗HER2療法は分子標的薬を用いた治療法の一つです。先ほどご紹介した乳がんのサブタイプの中で、HER2が陽性の人に使用されます。
HER2陽性とは、HER2というタンパク質を利用して増殖するタイプの乳がんで、このタンパク質だけを狙って攻撃するのが抗HER2療法です。
- トラスツズマブ
- ペルツズマブ
- ラパチニブ
の3つ薬剤は保険適用されています。
抗HER2療法は抗がん剤と組み合わせるのが標準的な治療です。
抗体薬物複合体は抗体と薬物を結合させた薬
抗体薬物複合体は、がん細胞の表面に発現しているHER2を標的にする抗体に、がん細胞を攻撃する薬を合わせ、直接がん細胞を攻撃するものです。
正常な細胞は攻撃しないため、副作用も少ないとされています。
- トラスツズマブ エムタンシン
- トラスツズマブ デルクステカン
の2つが保険適用されています。
免疫チェックポイント阻害薬は免疫細胞をサポート
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞が正常に働いてがん細胞を攻撃することができるようサポートする薬です。
本来、免疫細胞のT細胞はがん細胞を攻撃する働きを持っています。
しかしがん細胞の表面にある分子とT細胞の分子が結合し「免疫チェックポイント分子」が作られると、T細胞はがん細胞を攻撃しなくなってしまうのです。
この免疫チェックポイント分子の働きを阻害するのが、免疫チェックポイント阻害薬です。
現在は
- PD-1
- PD-L1/2
- CTLA-4
- LAG-3
などのチェックポイントがあることがわかっており、これらの分子の働きを阻害する薬が開発されています。
乳がんのステージ4の手術
乳がんステージ4は手術を行わないのが基本ですが、場合によっては行うことがあります。
基本的に手術は行わない
乳がんステージ4は、乳房以外にがんが転移してしまっているため、全てのガンを取り除くことが難しい状態です。
ですので最初から手術が選択されることは少なく、薬物療法が中心となります。
Stage Ⅳ乳癌に対して予後の改善を目的とした原発巣切除は行わないことを強く推奨する。
推奨の強さ:4,エビデンスの強さ:強,合意率:89%(41/46)
引用元:CQ4 Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除は勧められるか? | 外科療法 | 乳癌診療ガイドライン2022年版
1つ転移しているということは、他の場所にも転移していることが考えられ、1カ所だけ手術で摘出しても再発の可能性が高いため、手術は行いません。
ただし、乳がんの部分がただれたり出血したりして、皮膚の症状が出ているような場合や、薬物療法の効果が認められ、がんを切除することが治療に役立つと考えられる場合、ステージ4であっても手術を行うことがあります。
乳房温存手術(乳房部分切除術)はがんの部分だけを切除する手術法
乳房温存手術は、乳房のがん細胞その周辺だけを切除する手術法のことです。乳房全体を切り取るのではないため、乳房の形を残すことが可能です。
乳房温存手術が行うには、
- 腫瘍の大きさが3cm以下であること
- がんが広範囲に広がっていないこと
という条件が必要です。
場合によっては3cm以上でも手術は可能ですが、乳房の中で何カ所にも発生していると、この方法はとれません。
なお、がん細胞を取り除いても再発するリスクがあるため、放射線治療と組み合わせて行うのが一般的です。
乳房切除術は乳房全体を切除する手術法
乳房切除術は、胸筋を残して乳房全体を切除します。
かつては、胸筋も含めてすべて切除されていましたが、体への負担が大きいことから、大胸筋・小胸筋ともに残す方法が主流です。
局所再発のリスクを無くすことができるのが大きなメリットです。
なお、乳房をすべて摘出しても、自分の組織を使ったり、シリコンを入れたりして再建は可能です。
腋窩リンパ節郭清は脇の下のリンパ節の切除
脇の下のリンパ節は、乳がんが最も転移しやすいところであり、かつては乳がんと診断されると、腋下リンパ節も同時に取り除く手術が行われていました。
センチネルリンパ節とは、液化リンパ節の中でも乳がんの細胞が最初に到達するリンパ節であるため、ここに転移していなければを行う必要はありません。
乳がんステージ4の放射線治療
放射線治療は、一定期間、がん細胞に放射線と直接照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。
薬物治療法と組み合わせて、また、乳房温存手術を行った後は放射線治療が必要となります。
放射線治療の手順
- 照射する部位と放射線量などを主治医が決める
- 照射位置に特殊なインクで印をつける
- 1日1回、照射を行う。照射時間は1〜3分程度
1回2グレイ×25回=5週間の治療というのが一般的でしたが、最近では1回の照射量を増やし、回数を減らす方法も行われています。
放射線治療の副作用
放射線治療を行うと、照射した部分が日焼けをした時のように赤くなったり、カサカサになったりすることがあります。
そのような場合は患部を冷やしたり軟膏を塗ったりしてケアします。
中には倦怠感を感じたり、放射線性肺炎を起こしたりする人もいるので、体調に変化があったときはすぐに主治医に相談しましょう。
乳がんステージ4の緩和ケア
緩和ケアというと、末期がんの人が受けるものというイメージを多くの人がお持ちだと思いいます。
しかし、がんにかかったことの精神的な苦痛を和らげたり、QOLを維持したまま治療に専念できるよう、さまざまなサポートの仕方があるもので、がんのステージにかかわらず受けることができるものです。
がん治療における緩和ケアの必要性
患者さんは乳がんになったことでさまざまな不安を抱え、辛い思いをしています。日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。
特に、手術を受けると乳房の変化に伴い、女性としての自信をなくし、落ち込んでしまう人も少なくありません。
ですから身体的にも精神的にも、支えとなってくれる存在が必要です。自分らしさを忘れず、前向きに治療に取り組んでいくためにも、ぜひ緩和ケアを取り入れてください。
また、緩和ケアは、患者さん本人だけでなく、家族にとっても必要なものです。大切な家族が病気になれば、心を痛めるのは当然のことですから、力を合わせて治療に向き合うためにも、ご本人と一緒に緩和ケアをぜひ受けてください。
緩和ケアはいつでも受けられる
緩和ケアは、がんの進行状態にかかわらず、乳がんと診断されたそのときから受けられるものです。
乳がんの治療は、時間のかかるものです。心身ともに安定したベストの状態で治療を受けるために、患者さんが助けを必要とするときはいつでも受けられるものであるということを知っておいてください。
緩和ケアでできること
緩和ケアでは、このようなサポートができます。
- がんの痛みを和らげる
- 臨床心理士によるカウンセリング
- 抗がん剤治療の副作用を和らげる
特に、痛みは辛いものです。満足に休息することもできず、がんの治療がつらくなってしまうこともあるでしょう。
医療用の麻薬などを使用しながら、できるだけ普段通りの生活が送れるようにサポートしてもらうことが可能です。
麻薬と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、安心してください。
痛みの治療〔医療用麻薬(オピオイド)を含む〕によって命を縮めることはないことが証明されており,痛みを十分に和らげることは,患者さんの生活を支えるうえでとても重要なことの一つといえます。
引用元:Q13.緩和ケアについて教えてください。 | ガイドライン | 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版
その人によって必要なサポートは違います。助けが必要なときは、小さなことと思わず、我慢することなく、なんでも主治医に相談しましょう。
緩和ケアはどこでも受けられる
緩和ケアは、緩和ケア専門の病院でなければ受けられないというものではありません。
全国にがん診療拠点病院があり、入院していなくても、外来で通院しながら受けることも可能です。
緩和ケアは保険適用されています。たとえば入院中に受ける場合は、「緩和ケア診療加算」が1日あたり3,900円となります。3割負担ですと1,170円です。
在宅緩和ケアも利用できる
入院、通院が厳しくなり、自宅で過ごしている人も在宅緩和ケアを受けることができます。訪問看護ステーションを利用し、医師や看護師に来てもらってケアを受けます。
住み慣れた我が家で病気と向き合いながら、生活の質を落とさないための大切なサポートです。
費用の目安は、週3回の訪問で1月あたり40,000円です。別途交通費などが必要となります。
乳がんステージ4の治療は諦めないことが何より大事!
乳がんステージ4と診断されると、気持ちがとても落ち込んでしまう人が多いです。がんと診断されただけでもショックなのに、ステージ4といわれれば当然のことだと思います。
しかし、諦めないことが何よりも大切です。緩和ケアを受けながら、前向きに治療に取り組んでいきましょう。
医療は日々進歩しています。乳がんの治療も、患者さんに負担をかけず有効な方法がどんどん生まれています。
たとえ完治できなくても、普通に日常生活を送ることができて、長く生きていくことができるように医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
乳がんステージ4の治療後に再発したら
乳がんのステージ4は、他臓器への転移がありますので、根治が難しいとされています。
ですので、たとえ手術で病巣を取り除いても、再発する場合があります。
通常は、再発の状態によって再度切除することもありますが、ステージ4であれば基本的に薬物療法で全身を治療してくことになります。
乳がんのサブタイプ分類や患者さん本人の希望なども取り入れながら、生存期間を延長させる治療法が選択されます。
乳がんのステージを確定させるための検査
乳がんのステージはどのようにして決められるのか、検査について解説します。
視診・触診でしこりの有無を確認する
視診は目で見る診察のことで、乳頭から分泌物が出ていないか、左右の乳房が対象になっているかなどを観察します。
触診は触って検査をする方法です。乳房や脇の下を触り、しこりがないかどうかをチェックします。
マンモグラフィ検査は乳房のX線撮影
マンモグラフィ検査とは、乳房をX線で撮影する一般的な検査の方法です。手で触れても分からないくらいの小さなしこりや、石灰化した組織を見つけることができるため、早期発見に役立ちます。
ただし、板で乳房を挟み、平たくして撮影することから、やや痛みを伴います。
マンモグラフィ検査では、がん細胞も正常な乳腺も白く写ります。そのため、乳腺の密度が高い高濃度乳房ではがん細胞を見つけにくいことがあります。
超音波検査(エコー検査)は妊娠中でも可能な検査
超音波検査は、乳房に超音波を当ててその反射波を利用して画像を撮影する検査です。マンモグラフィ検査とは違い、痛みはありません。
超音波検査では、乳がんは黒く映るため、高濃度乳房でも病変を見つけやすいというメリットがあります。
また、X線を使用しないので、妊娠中でも検査ができます。
MRI検査は良性か悪性かも確認できる
MRI検査では、離れた場所にあるしこりも見つけることができるので、非常に正確な検査です。
乳腺のMRI検査では、造影剤を用いることによって、がんの周囲に新しくつくられた血管や血流の増加しているようすを映し出すことができ、腫瘍が良性か悪性かを確認する上で役に立ちます。
引用元:MRIは何のために行うのですか? | 乳がんQ&A |
筒のような機械の中に入り、強い磁気の中での検査になりますので、ペースメーカーを装着している方や、体内に金属が埋め込まれている方は検査ができないことがあります。
最近では、造影剤を使用しない無痛MRI検査(ドゥイブスサーチ)も行われるようになってきています。
がんの診断を確定するための病理検査
ここまでの検査で、がん細胞が発見されたからといって、ただちに乳がんの診断がなされるわけではありません。
あくまでも乳がんの疑いがあるというだけのことであり、最終的な確定診断は、細胞を採取して病理検査を行ってからです。
乳がんは早期発見で治療ができる病気!乳がん検診を受けよう
乳がんは、初期の頃に発見できれば治療が可能で、5年生存率も非常に高い病気です。早期発見のためには乳がん検診を受けることがとても大切です。
乳がん検診は2年に1度受ければ良い
乳がん検診は任意で受けることもできますし、自治体でも実施しています。
- 対象者:40歳以上
- 検診内容:問診、マンモグラフィ検査
- 期間:2年に1度
検診は、このような流れで進みます。
乳がんは進行が比較的ゆっくりで、浸潤がんになるのに数年かかるといわれています。ですので、2年に1度検診を受ければ、早期発見が可能だと考えられています。
専門家で構成される「がん検診事業の評価に関する委員会(厚生労働省)」において、乳がん検診の受診間隔について検討した結果、2年に1度とすることが適切であるとされています。
引用元:乳がん検診Q&A|知っておきたいがん検診
乳がん検診の受診率は低い!積極的に受けよう
日本は、乳がん検診の受診率が低いことが問題視されています。諸外国と比べると、日本の受診率が低いことがわかります。
内閣府の行った「がん対策に関する世論調査(平成28年)」によると、以下の理由が挙げられています。
繰り返しになりますが、乳がんは早期発見すれば治療ができる病気です。乳がん検診は2年に1度受ければ良いので、忙しい中でも必ず受けて欲しい検診です。
乳がんのステージ4についてのよくある質問と回答(Q&A)
乳がんステージ4に関して、みなさんが疑問に思うこと、知りたいことについてまとめました。
乳がんステージ4の生存率はどのくらい?
乳がんステージ4の5年生存率は37.1%です(全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査KapWebより)。
ステージ3までは80%を超えていますので、早期発見がいかに大切かがわかります。
他臓器に転移する前に治療を開始することができれば、非常に生存率の高い病気なので、2年に1度は必ず検診を受けましょう。
乳がんステージ4の平均余命は?
乳がんステージ4の5年生存率はおよそ40%で、他のがんと比べて生存率の高い病気です。
ステージ4と診断されても、それは末期がんと同じではありません。5年、10年と生存している人がいるのですから、あきらめずに治療を続けていくことが何よりも大切です。
乳がんは適切な治療ができれば、十分効果が期待できます。
それはステージ4でも同様で、完治は難しいとしても、症状を抑えつつQOLを維持しながらできるだけ長く生きられる方法を模索します。
乳がんステージ4の症状にはどのようなものがある?
しこりが大きくなってくると、乳房の左右さが出たり、皮膚が引きつったようになったり、乳頭から分泌物が出ることもあります。
ただし、乳がんのステージ4はしこりの大きさは問わないため、乳房の変化がわからないこともあります。
他臓器へ転移してしまっていることから、その場所で増殖したがん細胞によって痛みが出ることがあります。骨に転移した場合には、骨がもろくなるケースもあります。
乳がんステージ4になると手術できない?
乳がんステージ4は、すでに他臓器に転移をしていることから、乳房のがんだけを切除してもあまり意味がないと考えられ、基本的に手術は行いません。
全身のがんに対応できるよう、薬物療法や放射線治療が基本です。1カ所転移があれば他にも転している可能性が高く、すべてのがんを切除することが難しいからです。症状を抑えながら、できるだけ長く生きられることを目的として治療を行います。
ただし、出血やただれがあるなど乳がんを切除した方が良い場合には、手術が行われることもあります。
乳がんステージ4で完治する確率はどのくらいですか?
ステージ4は完治が難しいため、がんをこれ以上進行させないようにすることと、症状を抑えながらできるだけ長く生きられるように薬物療法が中心となります。
必要に応じて緩和ケアも取り入れ、自分らしく、今まで通りの生活を送ることができるような治療を行うため、完治を目指すものではないということを理解しておく必要があるでしょう。
ちなみに、国立がん研究センターが発表したデータによりますと、乳がんステージ4の10年生存率は16%です。
乳がんステージ4でも生存率は高い!諦めずに前向きな気持ちで治療に取り組む
乳がんステージ4は、しこりの大きさは問わず、乳がんが他臓器へ転移してしまっている状態です。手術ですべてのがんを取り除くことが難しいため、薬物療法を行うのが基本です。
ステージ4というと末期がんと同じだと思ってしまう人がいますが、決してそうではありません。乳がんは5年生存率の高いがんであり、ステージ4でもおよそ40%と非常に高いです。
何よりも、諦めずに前向きな気持ちで治療に取り組むことが大切です。がんと診断されただけでも気持ちが落ち込むと思いますが、緩和ケアも利用しながら、がんとうまく付き合っていきましょう。
ただし、当然ながら早期発見するほど生存率が高くなります。ステージ3までなら80%を超えますので、少しでも早く発見することが何より大切です。